【アメリカ大統領選の行方】バイデン再選へ3つの危機を超える策とは ガザ、ウクライナ、国境問題…最も重要な決断
変わる米国内のイスラエル支持
この論説は第2期トランプ政権は米国にとり大変な結果を招くとの認識に立って書かれているものである。この間、トランプが大統領として北大西洋条約機構(NATO)の主要国の首脳に言っていたと明らかにした発言(防衛費を十分に払っていない国を守らない、ロシアに好きにすればよいと奨励するなどの発言)に鑑み、イグネイシャスの懸念を共有するに至っているので、この論説で彼が書いていることには賛成である。 イグネイシャスは、現在米国が直面している危機にバイデンがうまく対応すれば、バイデンは高齢批判などを乗り越えられると言っているが、おそらくそうであろう。バイデンはウクライナ支援についても、ガザ紛争についても、おおむねイグネイシャスが主張する方向で政策展開をしていると思われる。そして、それはうまく行く可能性が高い。 イスラエルのネタニヤフ首相は、ハマスの殲滅を相変わらず言っているが、ハマスは団体であると同時にイスラム原理主義運動の一部であり思想運動であるから、殲滅というのは達成しがたい目標である。そういう目標を追いかけて、無辜のガザの子供などを殺しているイスラエルの過剰な武力行使は、米国がイスラエルへの軍事支援を止めるなど強い対応をすれば変えさせることは可能であろう。
イスラエル支持は米国内政治上、例えば選挙での支持につながってきたが、この状況が微妙に変わってきている。若者や左翼はイスラエルの無差別的ガザ攻撃に批判を強めている。バイデンがイスラエルに強い立場をとることが国内政治上も有利な状況が生まれてきている。 ウクライナ支援については、共和党がロシアに味方する形になっているが、これに居心地の悪さを感じている共和党員も多いと思われる。議会工作次第であると思われる。 南部国境問題については、バイデンが自らの権限行使でやれることはイグネイシャスが言うように多い。共和党はこういう小さな問題を人質にして、大きな問題をサボタージュしているように見える。
考えておくべき「後継者」
イグネイシャスが最後に提起しているバイデンの副大統領候補の指名は重要な問題であると考えられる。ハリスの国民的人気のなさを考慮し、適切な副大統領候補を選ぶことがバイデン政権の継続にとり最も重要な点であるように思う。 そもそもバイデンは第1期目就任の時点から後継者を考えておくべきであった。適切な副大統領候補を選ぶことはその罪滅ぼしにもなるだろうし、高齢者批判を払しょくし、安心してバイデンに投票する人を増やせるかもしれない。
岡崎研究所