離婚した夫が「生活保護」を受けたいようです。元妻でも「扶養義務」は発生するのでしょうか?
生活保護を受けられるかを判断する事柄のひとつに、扶養してもらえる親族がいるのかどうかがあります。もし存在する場合は扶養届書が親族へ届き、親族は扶養ができるかどうかの記載が必要です。 離婚したあとでも、成人した子どもがいる場合は扶養義務を有するので、子ども宛てに扶養届書が届くケースもゼロではありません。 今回は、生活保護の扶養義務や、離婚した相手でも扶養義務はあるのかなどについてご紹介します。 ▼「生活保護」の受給要件とは? 親族への扶養照会は必須なの?
生活保護における扶養とは
生活保護を申し込むと、扶養義務を有する親族がいるかの確認が行われます。申請が認められるための基準に「親族などから支援してもらえる方は、扶養を受けること」というものがあるためです。 そもそも、生活保護が必要と認められるためには、世帯単位で利用できる財産や能力などを、最低限の生活を維持するために活用している必要があります。親族からの扶養もそのひとつで、もし利用できるなら利用しなければなりません。
扶養照会をされる可能性のある人
扶養照会とは、扶養義務を有する親族へ、扶養できるかどうかを確認することです。 民法第877条によると、直系血族および兄弟姉妹は、お互いに扶養をする義務があるとされています。つまり、相談者の子どもや親、兄弟姉妹は扶養義務の対象者です。 そのため、もし離婚した夫が生活保護を受けようとすると、元妻には扶養照会が来ませんが、子どもが成人していれば子どもに扶養照会の案内が来る可能性があります。 ■扶養照会されても拒否できる 扶養照会の通知が届いても、必ずしも相手を支援する必要はありません。 生活保護の相談者には虐待やDVを受けていたなどの理由で、支援をされたり支援に伴って居場所を知られたくなかったりするケースもあるでしょう。こうした事情がある場合は、扶養照会として届いた文書に支援ができない旨を記載し、返信すれば基本的に問題ないとされています。 扶養照会がされると「扶養届書」が届きます。項目ごとに支援の可否や、現状などを記載しましょう。記載にあたって、書きたくないことやどう書けばいいか分からない場合は、自治体や弁護士などの専門家への相談するのもひとつの方法です。 ■相談者自身も扶養照会を拒否できる また、生活保護を受ける方自身が扶養照会を拒否できる場合もあります。扶養照会により、さまざまな事情で距離を取っていた親族に居場所がばれる可能性もあるためです。 厚生労働省によると、相談者の事情により明らかに扶養ができなかったり、扶養照会をすることで相談者の自立を妨害したりする可能性のある場合には扶養照会は必要ないといわれています。 もし生活保護を受ける際、扶養照会をしてほしくないときはケースワーカーに事情とともに伝えておくといいでしょう。