乃木坂46 向井葉月、アンジュルム 川村文乃......卒業と芸能界引退に見るアイドルのセカンドキャリアの多様化
乃木坂46の向井葉月が、11月1日に公式ブログ及びラジオ番組『乃木坂46 向井葉月の木曜ここで待ちあわせ』(BAYFM)の中でグループからの卒業と芸能界からの引退を発表した。公式ブログによると、2024年12月11日に発売される37thシングルには参加せず、年内いっぱいで卒業するとのこと。 【写真】ライオンズ岡田選手からサインをもらう向井葉月 今回注目したいのは、向井の“芸能界の引退”という決断である。多くのアイドルはアイドル活動のその先に俳優やモデルといったキャリアを描いて、卒業後も芸能活動を続けていくケースが多いが、芸能界からの引退を選択するアイドルも少なくはない。本稿では、7月にアンジュルム及びハロー!プロジェクトからの卒業と芸能界引退を発表した川村文乃の事例を踏まえて、改めてアイドルのセカンドキャリアについて考えてみたい。 公式ブログでで、「乃木坂に入って8年以上経ちますが、変化というものに柔軟になれない私は年を重ねるにつれて活動中に悩むことが増えていきました」(※1)と綴った向井。バラエティ番組では天真爛漫な笑顔を見せている一方で、ブログで乃木坂46について語る向井はどこか思い詰めているような節があった。それは分厚い仮面を被り、本当の姿を隠しているかのような、少しでも触れたら粉々になってしまうような、そんな印象さえあった。だからこそ、「そんな中でもメンバーと楽しい時間を過ごしたり、自分と向き合ってみたら、いつの日かステージに立つ自分がすごく好きになっていて、乃木坂を卒業したその先の未来の自分にも前向きになれていることに気づき卒業を決めました」(※1)という言葉を聞いて、どこかホッとしたのを覚えている。 向井はアンダーとして長い時間を過ごし、34thシングル『Monopoly』(2023年)で初めて選抜メンバーに選ばれた。7年のアンダー経験で得られたのは「どこにいても乃木坂として輝ける」ということ。選抜とアンダーという、外から見れば明確な線引きがある制度の中で、乃木坂46として活動する生き甲斐を見出したことの意義は大きい。 また、埼玉出身の向井はプロ野球チーム・埼玉西武ライオンズの大ファンを公言しており、2024年3月にはラジオ番組『文化放送 ライオンズナイター』の番組公式マネージャーに就任。2023年9月1日の西武VS福岡ソフトバンクホークス、今年6月13日の西武VS広島東洋カープではセレモニアルピッチを務めた。「乃木坂野球部」のメンバーとして、今後野球方面での活躍が期待されていただけに、今回の卒業は野球ファンからも惜しむ声が相次いだ。 一方でアンジュルムのサブリーダーを務める川村もまた、アイドル卒業と同時に芸能界からの引退を発表している。2017年5月に『Hello! Project 研修生発表会2017 ~春の公開実力診断テスト~』にてハロー!プロジェクトのメンバーとしてのデビューが発表され、同年7月にアンジュルムとして活動をスタート。2019年6月からは2代目サブリーダーに就任し、グループを牽引してきた。 川村は日本で9番目、女性初となる「1級マグロ解体師」資格取得をはじめ、『特捜戦隊デカレンジャー20th ファイヤーボール・ブースター』で牧野植物園のベテラン学芸員 ・モクミス役で出演、演劇女子部として多くの舞台を経験するなど、個人としても幅広い活躍をしてきた。また、ゆず活アンバサダー、高知県観光特使、高知市PR大使と、地元の高知県に根ざした活動も多く行っており、11月12日に発売される2nd写真集『permanent girl』(ワニブックス)はそんな川村の地元愛が結実した作品となっている。 川村の「始めることよりも終わりを決めるほうが難しいと分かってはいたし、たくさん考えてきたけど私はアンジュルムの活動をもって、アイドル川村文乃としての物語を終わらせることにしました。諦めるよりもこだわり抜くことが出来てよかったです!」(※2)という言葉は、アンジュルムとして、アイドルとして真っ直ぐに向き合い続けてきた川村のキャリアへの向き合い方が表れている。 以前よりも長期的なアイドル活動を視野に入れているアイドルは増えてきているが、アイドルという職業は有限である。その際に必ず議論の的となるのが、アイドル卒業後のセカンドキャリアだ。