「誰もがクリエイターになる日」アドビが仕掛ける生成AI革命
■自社開発AI「Firefly」で他社と差別化 こうした技術の背景にあるのは、もちろん生成AIだ。アドビは独自に「Firefly」という生成AIを開発し、さまざまな製品で利用している。Fireflyが公開されたのは2023年3月のこと。最初は「文章で画像や文字を含む静止画を生成する」というシンプルな機能からスタートしたが、現在はより多彩なコンテンツの生成が可能になっている。 その中で今回正式にスタートしたのが、冒頭で紹介した動画生成機能、ということになる。
動画を生成するAIは、今年に入って急速に注目が集まってきた。今年の2月、OpenAIが「Sora」を公開したのが1つのきっかけではあっただろう。文章から生み出されたリアルな映像は、SNSなどでかなり幅広く拡散された。 アドビもそれを追いかけた……という印象を受けそうだが、実際にはちょっと違う。ビデオ生成を手がけていることは昨年すでにアナウンス済み。画像の次は動画、というのは自明であり、「どこも開発していて、どこが最初に公開するか」という流れ、と理解するのが正しい。
■Fireflyは他社とどう違うのか OpenAIら他社の動画生成AIと、アドビのFirefly・ビデオ生成モデルにはいくつもの違いがある。 1つ目は「すでに誰もが使える」こと。最初に注目を集めたOpenAIのSoraは、10月15日現在、一般の利用者には公開されていない。Fireflyは「動画の長さは5秒まで」という制限付きのテスト公開ではあるものの、すでに誰でも使える。 2つ目は、「最初から各種ツールに組み込まれていること」。動画をゼロから生成することもできるが、前述のように、動画編集ソフトから使えるようになっている。前出のように、Premiere Proでは編集中の動画を2秒分伸ばす「拡張生成」機能として利用している。
秒数自体はテスト中ゆえのもので、伸ばすこと・変更することが検討されている。だが、ゼロからの生成ではなく「拡張生成」を軸にしていることには明確な理由がある。 アドビ・プロフェッショナルフィルム&ビデオ製品マーケティングディレクターのミーガン・キーン氏は、「拡張生成」として生成AIをPremiere Proに搭載した理由を「クリエイターの実作業に則したもの」と話す。 ビデオ編集中には、意外なほど「映像の尺が足りない」という課題に直面する。映像素材が十分にあればいいのだがそうもいかない。「ここがほんの少し長ければ」と苦労することになり、「スローモーションにして長くする」とか「あまり意味のない映像を挟む」とか、いろいろと誤魔化しテクニックを使うことになる。