三菱モルガンを3次提訴、クレディS債損失で-賠償請求83億円に
(ブルームバーグ): 無価値化したクレディ・スイス・グループの永久劣後債(AT1債)を巡り、同債を販売した三菱UFJモルガン・スタンレー証券を相手取り損害賠償を求めている集団訴訟で、14人の個人投資家らが新たに同証を28日に提訴したことが分かった。これにより、賠償請求総額は約83億円に拡大した。
原告代理人を共同で務める山崎・丸の内法律事務所が同日、東京地裁に提出した資料によると、AT1債を購入した個人投資家らが、取引による損失や弁護士費用など総額約13億6590万円の支払いを三菱モルガンに求めた。これまでの請求総額は約69億3000万円だった。
今回の訴訟について、三菱モルガンの広報担当者は、訴状を確認していないためコメントは控えたいと述べた。
今回の提訴は2023年12月に続く動きで、集団訴訟の第3弾となる。クレディSは経営が傾きUBSグループに買収されたが、仲介に入ったスイス政府の判断で約160億スイス・フラン(約2兆6000億円)相当のAT1債が無価値になり、投資家が損失を被った。それから1年数カ月が経過した現在も、世界中で問題が沈静化していないことを表している。
一部の投資家は最近、米ニューヨーク州でスイス政府を訴え、ヘッジファンドのアパルーサはクレディSを提訴した。
日本では23年8月に、山崎・丸の内法律事務所が三菱モルガンに対し最初の集団訴訟を提起した。クレディSのAT1債販売に当たり、顧客の投資経験や方針を踏まえた金融商品の販売や勧誘を求める「適合性原則」に違反したとして賠償を求めている。
今回の訴訟により、同法律事務所を通じて損害賠償を請求している原告の数は106人となった。日本国内では約1400億円のクレディSのAT1債が売られ、三菱モルガンでの販売額はその約3分の2を占めていた。
ブルームバーグが入手した書面によると、三菱モルガンはこれまで、同債券の購入者は相応の知識または投資経験を持つ富裕層の投資家であり、適合性の原則から逸脱しているとは認められないなどと反論している。