堀井美香が語る、自分の「好き」を突き詰める尊さ。つらいことも「いつか、すべて自分の糧になる」
自分の中の「好き」をどう見つめ育てる?
─「自分って本当は何が好きな人間なんだろう」とわからなくなることもあると思います。堀井さんは自分のなかの「好き」を語られていてすごく素敵だと思うのですが、自分の「好き」を見つめたり、心のなかで育てる秘訣はありますか? 堀井:私は忙しいのもあって普段からべったりクラシックに触れているわけではないのですが、ちょっと空いた時間など、非日常のときにふと求めるものが「好き」の指標かなと思っています。 1日にたくさんの初対面の方と会う仕事なので、1人で静かにする時間をとても大事にしています。クラシックのコンサートではホールにいる観客1800人が一気に集中して、物音を立てず静かに聴く空間を体験しているので、クラシックを聴いたときにあの静かな感じを思い出せるんですよね。移動中の車のなかであってもクラシックを聴くと一瞬1人になって集中することができて、気持ちが穏やかになります。 ─『OVER THE SUN』では「私がこれを好きな理由」というテーマでリスナーのエピソードをまとめてZINEをつくられていますが、女性たちの「私がこれを好きな理由」を読んで感じたことはありましたか? 堀井:人の好きなことの話を読むってなんて幸せなんだろうと思いますね。人の愚痴を聞くのは辛いときもありますが、好きなものの話はプラスのオーラしか出ていないから幸せな気持ちで受け止められるんだと思います。みんなが(自分からは)距離をもった対象に対する「好き」は、利害関係なく共感しあえますしね。 「好き」を語るのも心に余裕がないとできないし、好きなものをどういうふうに自分のそばに置いておくかも日頃から考えておくといいと思います。イケイケなときに好きなものに頼るのは普通だけど、落ち込んだときに助けてもらえるような「好き」の対象を持っておきたいですよね。 ─堀井さんは落ち込んでいる時に自分を浮上させる「好き」の対象をお持ちですか? 堀井:クラシックはもちろんですが、喫茶店によく行きますね。にぎやかな煙モクモク系の喫茶店に1人で行きます。タバコは吸わないですが苦手ではないので、おじさんたちがモクモクしている古い喫茶店で1人の時間をつくっています。