「コレステロールは下げなくていい」。医学博士・柴田博×和田秀樹が斬り込む日本医学の闇
健康に長生きするには「コレステロールは下げる」のが常識。でも実はこれ、間違いなのです。実証研究に基づく対談は“目から鱗”の連続。日本人の生活を根本から変えてしまうかも。『80歳の壁』著者・和田秀樹が“長生きの真意”に迫る連載。今回の対談者は医学博士・柴田博氏。 【写真】日本はがん死亡率1位だから、40歳からはコレステロールを下げてはいけない【柴田博×和田秀樹②】
日本の医療・医学の闇
和田 柴田先生は今年87歳になられますが、未だ現役で“医学の闇”に斬りこまれていく。気力も頭の回転も若い頃と変わらない印象を受けます(笑)。 柴田 出会いは30年以上前ですが、以来、僕の本を推薦してくださったりして感謝してます。 和田 いえ、こちらこそです。僕の話は高齢者専門の浴風会病院での経験と、柴田先生の研究を基にすることが多いので。 柴田 浴風会はいい病院です。 和田 本当にそう思いますね。老人ホームが併設されているし、亡くなった方の約半数のご遺体を解剖する。柴田先生のような追跡調査もします。現実を見て実態に即した医療をしているんです。 柴田 実態を知るとさまざまな真実が見えてきますからね。 和田 例えば、高齢者の血圧は130と150の群では生存曲線は変わらない。でも180の群だと悪くなることが追跡調査でわかりました。だから160くらいまでなら問題ないって話になるんです。血糖値も高い群、低い群ともに、生存曲線はまったく変わらない。つまり下げる必要はないということ。ところが、日本では実態調査の研究が無視されてしまうんです。 柴田 おっしゃるとおりですね。 和田 柴田先生の小金井市の研究でも「コレステロールは高めでいい」と証明されています。 柴田 いや、高いほうがいい。コレステロールは高齢になるほど、高くなきゃダメなんです。 和田 「百寿者の調査」では全国の100歳以上の人を訪ねて実態に迫られました。世界の先駆けになった老人研究です。 柴田 1972年から1973年にかけて、北海道から沖縄まで105名を選んで家庭訪問した。医学者、栄養学者、社会学者、心理学者、みんなで話を聞くのです。調査前は「菜っ葉を食べて生臭い肉は避けている」なんて予想してたけど実際は違った。摂取カロリーのなかで一日にどれだけのタンパク質を摂っているのかを調査。国民健康・栄養調査の平均よりかなり高い割合で動物性タンパク質を摂っていたんです。目から鱗でしたね。 和田 先ほどの小金井市の研究などさまざまな調査をされています。「実際に長生きしている人がどんな人か」を分析する。動物実験や机上の空論ではなく、人間から得る実証ですから、最も確かな理論です。 柴田 はい。研究するうちに長生きする人はコレステロール値が高い、動物性タンパク質を多く摂る、牛乳を飲む、太り気味であることなどが明らかになってきました。世間が信じている常識とはまったく違うんです。 和田 「血圧やコレステロールは低いほうがいい」という説は、アメリカの有名なフラミンガム研究が基になっています。だけどそれを日本に当てはめるのは無理がある。アメリカは心筋梗塞で死ぬ人が多かったけど、日本では少なかったわけですから。 柴田 アメリカ人は太い動脈が詰まって心筋梗塞になる。日本人は細い動脈が切れて脳卒中になる。動脈硬化のタイプが違うんです。当時の日本人は栄養状態が悪いから血管が脆(もろ)く、切れやすかったのです。 和田 その後、栄養状態がよくなると同時に寿命も延びた。 柴田 20世紀に入り、世界の平均寿命は50歳を超えました。肉をよく食べる国から順に、平均寿命は伸びてきたんです。これもデータでわかっています。日本は欧米より半世紀遅れました。低栄養でしたからね。低栄養ゆえ、結核や脳卒中で早死にする人が多かったわけです。