私「待機」やめました(1) 夫婦交代制の育児
心の余裕を生み出す環境を
美絵さんのように結婚し、妊娠がわかって退職した人、2人目以降の妊娠をのぞむために復職をためらっている人もいるだろう。また、初めて子育てする人の中には「子どもを預けることが責任放棄のように感じてしまう」親は少なくない。保育園に預けるか預けないかの両極端な選択肢で、フルタイム勤務でないと保育園利用が難しいいまの環境では、育児と仕事の両立を不安に思う人は多く、復職への一歩さえ安心して踏み出すことができない。 美絵さんは、セーブしながらも仕事を続け、子育てに余裕をもって取り組むためには、短時間で良いので気兼ねなく子どもを預けることのできる環境が必要だと話す。例えば、週3日の勤務でも利用できる保育園、子どもにとっても学びになり親は同席しなくても良い幼児教室、そして何より、夫や実家の親のように、気兼ねなく子どもの世話をお願いできる環境が大切だ。 「産前産後の2年間で社会から取り残されたような気持ちになり、新しい仕事を見つける勇気も持てませんでした。仕事を探すことが育児から逃げているような気がして、悪いことをしているような気にもなりました。頼れる実家も遠い私がこうして育児も仕事も両方取り組めるのは、夫と協力できる環境があったからです。安心して子どもを任せられる環境があれば、仕事のことにも2人目以降の子育てにも前向きになれると思います。私は夫がいたので助け合えますが、どこからも救いの手が差し伸べられず、もどかしく感じている方は他にもいると思います。」
働く時間帯の多様化と男女の育児分担という、育児と仕事の両立を果たす柔軟な働き方が男女ともにもっと広まれば、保育園入園一択ではない、生き方の幅を広げることになるのではないだろうか。 仕事をメインとするか、育児をメインとするか。いつ、何を選択するのか。 本当はもっと、やりがいのある仕事に就きたい。 本当はもっと、子育てに前向きに取り組む余裕が欲しい。 本当はもっと、社会から必要とされ、評価されたい。 本当はもっと、自分と向き合う時間が欲しい。 さまざまな制限がある中、子育て中の親たちがそう願うのは、贅沢なことなのだろうか。 社会は多様化し、常に変革している。行政に頼るばかりではなく、自分で仕組みを作ろうと働きかけを行う人も多い。次回以降、そうした取り組みを紹介していく。 (船本由佳)