どうなる天皇杯を連覇したガンバ・宇佐美の去就
苦悩を重ねたなかでシーズンをフルに戦い抜き、2位続きだったガンバに、最後に天皇杯というタイトルをもたすことができた。再挑戦への機は熟したという判断が、宇佐美のなかで下されても決して不思議ではない。 同じ1992年生まれの23歳で、日本代表でのライバルでもあるFW武藤嘉紀が、昨夏に移籍したブンデスリーガのマインツで7ゴールをマーク。プレミアリーグの名門マンチェスター・ユナイテッドが接触したという事実も、宇佐美の心を刺激しているはずだ。 一方で、ヨーロッパのシーズン途中での移籍は、新天地に順応するうえで大きなリスクを伴う。昨年のクリスマスイブに第一子となる長女が誕生したことも、いますぐ海を渡る決断を鈍らせる大きな要素になるだろう。 加えて、ガンバが待ち焦がれてきた新スタジアム、吹田スタジアムが来春にこけら落としを迎える。ガンバの関係者は、こんな光景を思い浮かべてもいた。 「せめてオープンのときは、宇佐美にはガンバのユニフォームを着て新しいスタジアムでプレーしてほしい」 こうした事情も勘案すると、2016年のファーストステージはガンバでプレーし、さらに結果を残したうえで、ヨーロッパの新シーズンに合わせて満を持して移籍というプランも浮上してくる。 「しばらく休んでリフレッシュして。正月を家族と過ごして、まあそこからという感じじゃないですかね」 最後まで言葉を濁した宇佐美は、かねてから新シーズンの条件を「劇的に成長できるところ」と位置づけていた。果たして、どのような決断を下すのか。わかっていることは、次にヨーロッパへ移籍するときは完全移籍。退路を断つだけに失敗は許されないことを、誰よりも宇佐美本人が理解している。 (文責・藤江直人/スポーツライター)