海辺に古書店、波音と本と過ごす時間 秋田・潟上「ふらっと立ち寄れる場所に」
秋田県潟上市の海辺に、海水浴客、息抜き中の会社員、買い物帰りの中高年、さまざまな人が訪れる古書店がある。2023年10月にオープンした「出戸浜の本やさん」は、料金箱に代金を入れて本を持ち帰るセルフ方式で、無人営業の時間帯も。「誰もがふらっと立ち寄れる場所に」。店主の柳山めぐみさん(42)が願いを形にした。(共同通信=添川隆太) 古書店は海の家に並んで立ち、店内は小説や専門書、絵本など約千冊が本棚を埋めている。本にはタイトルと代金が書かれた紙が挟まれており、購入時は紙と現金を箱に入れるシステム。 海のそばに開店したのは偶然だった。以前、県内の別の場所でセルフ式古書店の立ち上げに関わったことがあり、地元への出店を計画。駅前や国道沿いの物件を1年近く探したが、賃料が高く断念した。 ふと思い付いて海水浴場の空き物件を探し、この場所にたどり着いた。「景色もセットで思った以上に良かった」。売店だった8畳ほどの建物はほとんど改装せず、本や棚を入れて開店した。
仕入れは知人らからの寄贈でまかない、月に100冊ほどが売れる。営業は月曜と金曜の定休日を除いて午前10時から日没まで。荒天の日や用事がある時以外は、柳山さんが歯科衛生士の仕事の合間に店に立つ。 人口減少が進む秋田県。潟上市も例外でなく、海水浴場にかつてのようなにぎわいはない。「廃れた場所と言われるのが悲しかった」 ゆるやかに人と土地が結びつくような場所が理想。あくせくと、売り上げを気にする商売にする気はなく、セルフ式古書店くらいがちょうど良かった。「本を買わなくても、気軽に来て海を見るだけでもいい。この店で出戸浜のイメージが変わればうれしい」