「靴の中はずっとぐちゃぐちゃ」能登半島地震で災害派遣に向かう自衛隊員が持参する装備品のモロさ
◆【懐中電灯と電池も自己負担】 災害派遣の現場ではライフラインが途絶して停電していることが多い。夜間でも救助活動は続けられるため、ライトは重要な装備品だ。自衛隊では官給品が当直用に僅かにあるだけで隊員一人一人にあるわけではない。豆電球であるため、電池が大量に必要になり、さらに光量が乏しい。使うときには手持ちやポケットに挟むが、不安定で落としやすい。 派遣中の自隊員たちは各々別のメーカーのヘッドライトを装着している。ヘルメットに装着できる懐中電灯は両手が使えて便利だ。 官給品の懐中電灯は自衛隊で電池代が負担されるが、私物は隊員個人が電池代を負担する。自衛隊内では組織が性能の優れている用具を十分に準備してくれないため、自分達の道具は自腹で買うことが定着しており、それくらいは買ってくるのが当然という風潮がある。事前に購入してこなかった隊員は現場で辛い思いをする。万全に準備を整えようとすればするほど負担は大きくなる。自衛隊は、不満があれば辞めればいいとしてきた。 これは令和5年防衛省第一回有識者検討会議が公開した資料の一部だ。令和3年度では退職者数が入隊者数を上回っていることがわかる。退職者数(理由別)で見ると中途退職が5742名と退職理由の中で最も多い。自衛隊では度重なる定年延長を繰り返し人員の流出を抑えているが、効果は薄いようだ。このままでは現員を維持することも難しくなる。組織が隊員を大切にしなければ、帰属意識は低下し人は離れてしまう。不満があれば辞めればいいと切り捨てるのではなく、隊員の声を受け止めて職場環境を改善する努力が自衛隊には必要だ。 取材・文・写真:小笠原理恵 国防ジャーナリスト。関西外国語大学卒業後、フリーライターとして自衛隊や安全保障問題を中心に活動。19年刊行の著書『自衛隊員は基地のトイレットペーパーを「自腹」で買う』(扶桑社新書)。公益財団法人アパ日本再興財団主催・第十五回「真の近現代史観」懸賞論文で最優秀藤誠志賞を受賞
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