若者が就きたがる仕事がなければ韓国の未来もない(1)
エコノミーインサイト_Economy insight
「若者たちは働かず母親たちが働いている」。雇用統計が発表される度に見かける記事の見出しだ。20代の若者は家でゲームなどをして遊んでおり、60代の母親が息子に「このお金でお昼を食べてね。仕事に行ってくるね」と言っている場面が思い浮かぶ。「近ごろの子どもたちは大事に育てられすぎているから意志が弱い」と言いながら舌打ちする人もいる。 韓国の雇用市場をみると、そのような分析が間違っているようには思えない。実際に青年就業者は減少しており、中高年女性の就業者は増加している。職探しすらしない「休んでいる若者」の人口は増加している。なにがしかの問題がある。しかし、これを単に若者たちの意志の弱さのせいにして片付けることはできない。韓国雇用市場の本当の問題は、若者たちが就職しないことではなく、若者たちにとって魅力的な仕事が十分に作り出せていないことだ。 ■韓国の雇用状況は良好だが… まず、韓国の雇用状況を見てみよう。ほとんどの人は共感できないが、韓国の雇用状況は非常によい。企画財政部は2024年9月に「雇用率・経済活動参加率過去最高、失業率過去最低」と題する報道資料を配布した。前月8月現在の15歳以上の雇用率は63.2%で過去最高水準、失業率は1.9%で過去最低を記録した。「質の悪い雇用が増えただけだろう」と冷笑するかもしれない。しかし、いわゆるまずまずの仕事とされる常用職の割合も56.6%で、過去最高水準だ。統計的に雇用市場全体から特別な問題を見出すのは難しい。 ならば、本当に若者たちは遊んでいて、母親たちが働いているのかを見てみよう。2023年の1年間で増加した就業者の数は32万7千人。一方で60歳以上の就業者は36万6千人増加。就業者全体より60歳以上の方が、増加した就業者数が多い。60歳未満の就業者数は3万9千人減少している。 性別で分類してみると、就業者全体の増加分32万7千人のうち、女性就業者は30万4千人にもなる。男性は2万4千人に過ぎない。年齢と性別をいずれも反映して比較してみると、60歳以上の女性就業者は20万4千人の増加、39歳以下の男性就業者は8万1千人の減少だ。母親の就業者が増え、若年就業者が減ったのは明らかだ。 また、よく言われるものとして「休んでいる」という統計がある。雇用率、失業率は「働く意思のある人」(経済活動人口)を集計する。働く意思があるのに就業できなければ失業率に反映されるが、働く意思さえないと就業できていなくても失業率には反映されない。これを「非経済活動人口」という。 非経済活動人口には育児、家事、在学、年齢などの理由で働けない人が含まれる。その理由のひとつに「休んでいる」というものがある。特別な理由はないが求職活動をしておらず、文字通り「休んでいる人」だ。2024年8月現在で「休んでいる人」の数は256万7千人で、前年に比べ10.6%も増加。そのうち青年層に当たる20~38歳は74万7千人で、10.5%増加している。青年雇用統計は、就業者数が減少し、就職しようとする意思すらない人も増えているという現実を赤裸々に示している。 このような現実を個々の若者の意思の問題としてのみ考えると、ため息をつくだけで終わってしまう。しかし雇用の側面からみれば、韓国経済が抱えているより大きな問題が見えてくる。就職は、就業を希望している人の労働力の供給の側面からみることもできるし、どのような仕事がどれほど作られているかという労働力需要の側面からみることもできる。 労働需要の側面からみると、若者が就業できないのは若者にとって魅力的な仕事が十分に作られていないことにその理由があると解釈できる。2023年に増えた就業者の数は32万7千人。産業ごとに分類してみると、「保健業および社会福祉サービス業」の就業者が14万3千人で、増加数が最大だ。 韓国全体で、作り出された仕事の43%が「保健業および社会福祉サービス業」だ。この業種は高齢女性が多く従事しているため、社会福祉サービス業の雇用が増加すると、高齢女性の就業者数が増加する。一方、同じカテゴリーの中にある保健業の雇用が増えれば、20~30代の女性の就業者数が増加する。 製造業と建設業の景気がよければ40~50代の男性就業者数が増加し、運輸倉庫業の雇用が増えれば20~30代の就業者数が増加する。私たちが周りでよく見かける配達ライダーがどの年齢層のどちらの性別の人なのかを考えれば、理解しやすい。(2に続く) クォン・スンウ|3プロTV取材チーム長 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )