「最後まであきらめない」聖光学院 被災地へ届けるプレー センバツ
第94回選抜高校野球大会(毎日新聞社、日本高校野球連盟主催)第7日の25日、4年ぶり6回目の出場となった聖光学院(福島)は、2回戦で近江(滋賀)に敗れた。目標の「日本一」には届かなかったが、聖光学院らしい「泥臭い」プレーで甲子園を沸かせた。部員たちの胸にあったのは、被災した地元への思いだった。 【過去には小芝風花さんも】歴代センバツ応援イメージキャラ 宮城、福島両県で16日深夜、最大震度6強を観測した地震。聖光学院野球部の寮がある福島県伊達市も、震度6弱の強い揺れに襲われた。 2年生主体のBチームで主将を務める久保竣奨(しゅんすけ)さん(2年)は、携帯電話の緊急地震速報で目を覚ました。その直後、今まで感じたことのない激しい揺れ。久保さんは「温かい格好で靴下をはき、舎監(寮長)の指示があったらすぐ動けるようにしよう」と動揺する部員らに呼びかけた。 すでに大阪入りしていた赤堀颯(はやと)主将(3年)は宿舎のテレビで地震を知った。福島に残る部員らが心配になり、無料通信アプリ「LINE(ライン)」で無事を確かめた。同行していた斎藤心平さん(3年)は伊達市の実家に電話した。「家具は倒れて家の中はぐちゃぐちゃだけど、家族4人は無事だよ」。母の声を聞き、少し安心した。 高校ではパソコン室の天井が崩れ落ち、野球部の練習施設にも被害が出た。グラウンドにある防球ネットの柱を支えるワイヤが切れ、室内練習場のシャッターが大きくめくれ上がるなど、仲間と汗を流してきた場所が様変わりしていた。 翌17日、宿舎で開いたミーティング。赤堀主将は「俺たちが与えてもらった甲子園という舞台で、はつらつとしたプレーを見せることで被災地に元気を届けていこう」と仲間に呼びかけ、鼓舞した。 福島に残った部員32人は図書室に散乱した本などの片付けに追われた。久保さんは「この状況で甲子園へ応援に行けるのか」と不安が頭をよぎったが、20日、一塁側アルプススタンドに駆けつけることができた。 ベスト8進出をかけた25日。赤堀主将は4点を追う三回表、先頭打者として左翼線二塁打を放ち、仲間の犠飛で好投手から1点をもぎ取った。八回裏には、七回から途中出場した一塁手の古宇田来(らい)選手(3年)が邪飛を追いかけ、カメラマン席に飛び込む気迫のプレーを見せた。「最後まであきらめない」と誓った選手たちの意地だった。 試合終了後、赤堀主将は「(被災した方々に)勝ちを届けられず申し訳ないが、自分たちが大事にしてきたものを見てもらうことで少しでも力になったとしたらうれしい」と話し、こう付け加えた。「夏に向けて、また歩み始めないといけない」【玉城達郎】 ◇全31試合をライブ中継 公式サイト「センバツLIVE!」(https://mainichi.jp/koshien/senbatsu/2022)では大会期間中、全31試合を動画中継します。また、「スポーツナビ」(https://baseball.yahoo.co.jp/hsb_spring/)でも展開します。