キャベツとレタスを同じものと思ってた「平野レミの嫁」が和田明日香に成長するまで
溌溂とした姿でユニークな料理を披露する平野レミさんが、先月27日に新刊を出版した。 『平野レミの自炊ごはん せっかちなわたしが毎日作っている72品』(平野レミ著 / ダイヤモンド社)は、2019年に夫の和田誠さんを亡くしたあと、ひとりになったレミさんの初めての自炊本である。 【写真】結婚前は何もできなかったあの人が、料理始めたらメキメキうまくなって… レミさんと言えば、究極なまでに手間と調理時間を省き、それでも口の中ではしっかりと帳尻を合わせる、時短かつラクチンなレシピで定評がある。 前編「平野レミ『料理が楽しい』の原点。『フライパンだけで作るパスタ』ダメ出しされた日のこと」では、食べたいイメージが浮かぶと、最短でそれを作る方法が見えてしまう、レミさんの発想の源についてうかがった。 中編では、「料理のルールは知らなくてもいい」とおっしゃるレミさんの今も忘れられない失敗談と、現在料理家として食育インストラクターとして嫁姑共演も多い和田明日香さんの料理の腕前などについてお聞きした。 以下、インタビューでお伝えする。
前日からがんばって煮たのに…
――ずばり、料理で失敗はありますか。 横尾忠則さんって、ご存じ? (日本を代表する美術家、グラフィックデザイナー、版画家、作家) 横尾さんが遊びに来る時、(夫の)和田さんから、横尾ちゃんはお酒を飲まないからお汁粉作ってあげてね、と言われて、前の日から小豆をことこと煮たの。 豆が柔らかくなって、さあ、お砂糖を、となった時、塩と砂糖の容れ物が同じだったもんだから、間違えて塩をどばって入れちゃった。前日からがんばってことこと煮たのに、あんな残念なことはなかった……。 そういえば、昔、小麦粉と片栗粉を間違えちゃったこともあったかな。時々は焦がしたりとかね。 でもそんなの、やっているうちにだんだんうまくなっていくものなんです。
豚の角煮は恋愛と似てる
――イメージしていた料理ができなかったこともありますか? まだ若かった頃、どこかのレストランで豚の角煮を食べた時に、すごく大きいのが出てきたんだけど、箸でするりと切れて、ああ、なんておいしい、自分でもやってみようと思ったの。 早速塊肉を買ってきて、ことこと煮ながら、砂糖とか醤油とか酒とか調味料入れて煮たんだけど、全然柔らかくならない。それどころか、どんどん締まって硬くなっていく。 何度も肉を買ってきて挑戦したけど、みんな硬くなってだめにしちゃって。 どうしてだろうって考えて、調味料を入れないで、ただ豚肉だけを煮てみたら、柔らかくなったの。 箸がすっと通るくらいまで柔らかくなったところに調味料入れたら、豚肉にお味がすーっと入っていくのがわかって、そうか、豚肉の方に受け入れる準備ができてから調味料を入れるんだって気が付いたのね。 まるで恋愛みたいじゃない。 片方が豚肉で、もう片方が調味料だとするでしょ。調味料側が一生懸命好きだ、好きだって一方的に押し売りしても、豚肉側がなんとも感じなかったら、どんどん心が硬くなってしまう。 でも憎からず相手のことを思うようになったタイミングで、「好き」って言われたら、「私も!」って受け入れられる。 恋愛も角煮も、お互い受け入れられるようになるまで、タイミングを待つのが大事よね(笑)。