職場での方言で生まれる“ダイハラ”とは?使う人・使いたくない人・使われて嫌な人、それぞれの心理
■東京でも目立つ関西弁「メリットしかない」「方言を直さないのは関西人だけ」
大阪府出身の山崎伸治さん(54)は、関西弁を使い続けている。大学卒業後は京都で就職し、27歳で転勤のため上京したが、関西弁を貫いた。直す理由が1ミリもなく「得」ばかりだとして、「関西弁を話している方が自分らしい」「会話のきっかけや話題になる」といった利点を挙げる。 そして関西弁には、「仕事上メリットしかない」と断言する。「名刺交換で覚えてもらえる。空気が張り詰めた会議でも、関西弁だと和む。経営者としても、関西弁はへりくだって会話に入れるため使いやすい」。出身地によっても違いはあり、「関西人は『関西弁でええやん』と、あまり直す意識がない」と考察する。「東京で25年仕事しているが、東京の人が相手でも、むしろ関西弁で話した方がうまく行くケースが多い」。 一方で、同僚の方言に悩む人もいる。うららさんは、大学進学で北関東から上京し、両親の影響で家では九州弁だが、仕事では標準語を使ってきた。しかし職場に、関西弁を直さない同僚がいるという。朝礼もアクセントや訛りで理解できず、数字の数え方もおかしく、悪気なく「アホちゃうか」と軽々しく使うことから、「方言は直せるのに、関西人は直さないだけ」との思いを強くした。 関西弁を聞くと、「どの単語を指しているのか」と考えてしまう。「目標や成績の数値も、数字のイントネーションが違うため、脳内で考えなくてはならない。標準語の倍ぐらいの時間をかけて、『何が言いたいのかな』と考えているうちに、話が終わっている」。「大阪出身の人から『関西はずっと2番だと思っていて、東京に勝ってやろうと関西弁を使い続けている』と聞いたことがある。『だからアピールするのか』と納得した」。
■方言へのコンプレックスから「使いたくない」ケースも
標準語のプロであるアナウンサーは、方言について、どう考えているのか。テレビ朝日アナウンサーの田中萌は、「東京でも方言を話す人は、西日本出身者が多い。それは方言を話す自分に、コンプレックスやマイナス感情が少ないからではないか」と分析する。 山形出身の田中アナは「東北弁は、ドラマでも『田舎から出てきた子』がばかにされるなど、マイナス面で使われることが多く、あまり好きではない」と語る。その上で「山形弁は一度も話したことがない。30代はほとんど話さず、高齢者の言葉がわからないこともある」と振り返る。「劣勢だと思う人たちは、それを消していく傾向がある。東京で方言を話せる人は、どこかプラス感情があると感じた」。 元NHKアナウンサーの堀潤は、「方言の違いで優劣を感じさせるか」を論点に挙げる。「潜在意識として、言葉に優位性を持っていないか。国によっては内戦が起こりかねない。『標準語なら納得がいくとしても、上位にあるべきではない』と考える時期に来た」。 元TBSアナウンサーの吉川美代子は「前後の文脈から意味が伝わる場合と、アクセントによって意味が変わる場合がある。コミュニケーションは、自分が伝えたいことが伝わっていれば、どんな言葉やアクセントでもいい。そこには優劣はない」と指摘する。「話すテーマと距離感、場所やシチュエーションに応じて、山崎さんはうまくやっていると思う」。 (『ABEMA Prime』より)
ABEMA TIMES編集部