上田誠仁コラム雲外蒼天/第50回「刹那の差を生んだ箱根駅伝予選会~それぞれのドラマを紡いで~」
山梨学大の上田誠仁顧問による特別連載コラム。これまでの経験や感じたこと、想いなど、心のままに綴っていただきます! ********************** 一瞬の出来事を表す表現に“刹那”がある。由来は仏教における時間の最小単位だそうだ。 【連載】上田誠仁コラム雲外蒼天/年末特別編「~黄色きウェアーでランナーに背を向けて立つ君たちへ~」 箱根駅伝予選会はハーフマラソンの距離を各校チーム最大12名が走り、トップ10名の記録を合計したもので順位づけられる。 ハーフマラソンは21.0975km×10=210.975km。箱根駅伝の往復217.1kmに匹敵する距離である。 10位・順天堂大学 11時間01分12秒 11位・東京農業大学11時間01分13秒 明暗を分けた1秒。1人0.1秒の差はまさに“刹那の差”と表現せざるを得ない。 過去11回の優勝経験のある順大が10位。エース・前田和摩(2年)が不在でも、あと1秒及ばなかった東農大。机上の起算や下馬評が的中しないほど高温多湿のレース環境は、選手の体力を蝕んだことは事実であろう。 東海大の10番目でフィニッシュするはずであった選手。フィニッシュまで残り10mだった。目前にして気力を振り絞り、本能的にもそこに到達しようと渾身の力を振り絞ろうとしたはずだ。 20kmの通過が1時間2分31秒で100位前後の通過。1時間6分を割るゴールタイムを関係者は予測したはずだ。しかし、熱中症による脱水症状はその気力をも闇に閉じ込めてしまった。 ゴール手前で棄権を余儀なくされてしまったその刹那、選手の無念と関係者の悲痛な思いが心象風景となって私の胸を締め付ける。 結果的にチーム10番目は396位で1時間12分29秒、11番目が401番目で1時間12分47秒。1時間10分以内で走破していれば10位通過となっていたことを思えば悔やまれる。 レースが終了すれば、言い訳などは語れない。「たら・れば」談義は外野がするものとはいえ、レースの詳細を分析せずにはいられない。 出場権を争った上位チームで途中棄権を余儀なくされたのは、東海大学以外に東京国際大、神奈川大、日体大、国士大。日大は12番目の選手も完走者リザルトの最終盤、1時間18分19秒の480位。歩くようにやっとの思いでゴールしている。 参加44チームのうち、途中棄権は6人。その中で上位を争う大学が5チームあったことは出場権を懸けてリスキーなペース配分を余儀なくされたのか。はたまた、プレッシャーからくる体調の異変が加味されたのかは知れぬと思いを巡らせた。