せまい日本、そんなに急いでどこへ行く? 今こそ見直したいフェリー「スロートラベル」の魅力 旅客獲得に向けた戦略とは
活性化に向けた制度
フェリーの観光面におけるポテンシャルを引き出すには、運航会社の努力だけでなく、法令等の整備や世間的な認知度向上も欠かせない。 国土交通省により、2019年4月からインバウンド船旅振興制度が取り組まれている。インバウンド船旅振興制度は、旅客需要が見込まれる観光航路において、インバウンド旅客の個人旅行化(FIT化)の需要を効果的に取り込むため、航路の運航に係る制度運用を弾力化できるようになる仕組みだ。例えば、東海汽船が千葉~大島航路において、椿祭りのシーズンに運航回数を増やすなど、需要に応じて便数を増やしている。 また、訪日外国人旅行者の受け入れに向けて、案内放送や表示装置の多言語化、トイレの洋式化、キャッシュレス決済導入などを促進するため、補助金により事業者を支援してきた。 もちろん、フェリーの認知度を向上するために、裾野を広げるプロモーションも欠かせない。また、国土交通省海事局は「C to Seaプロジェクト」を展開している。 ・海に行く ・船に乗る ・海を知る につながるような、フェリーを含めた海にまつわる観光活性化に向けた取り組みだ。ウェブサイトは、観光から海の仕事までメニューが盛りだくさんで十分楽しめるようになっている。 民間レベルでは、関西を発着するフェリー事業者の団体である阪神フェリー協議会の取り組みが面白い。ウェブサイトもコンパクトにうまくまとまっており、過去には若い世代に向けて「ARE YOU FERRY~―はじめてのフェリー旅」というキャンペーンを行っていた。 今回は、フェリーの旅客サービスや観光面について話してきたが、次回は最終回として国内フェリーの課題と展望についてまとめてみたい。
山本哲也(交通ライター)