ヘリ事故のイラン大統領「イスラエルの不倶戴天の敵」 各国メディア、体制への影響を分析
イランのライシ大統領が搭乗するヘリコプターの着陸事故は、中東紛争の拡大が懸念されるさなかに起きた。ライシ師は「イスラエルの不倶戴天の敵」(仏紙フィガロ)とみなされており、各国メディアは大統領任務の継続が難しくなった場合の影響を報じた。 イランは、イスラエルと交戦するイスラム原理主義組織ハマスの支援国。4月には初めてイスラエル領を攻撃した。米国は紛争拡大を懸念しており、17日には米メディアが、米イラン両国高官のオマーンでの接触を報じたばかりだった。 イランで大統領が不在となる可能性を巡り、イスラエル紙エルサレム・ポストは「戦略的影響はない」とするイスラエル軍元幹部の分析を伝えた。イランでは最高指導者ハメネイ師が実権を握るため、「大統領は行政の担い手でしかない。不在になれば後任を決める手続きがとられるだけ」とみている。一方、タイムズ・オブ・イスラエル紙は、「イラン体制の方針に変化はなくても、権力闘争を引き起こす可能性がある」と報じた。 ライシ師は、イスラム法学者で保守強硬派。2022年、20代の女性が頭髪を覆うスカーフ「ヘジャブ」の不適切着用で風紀警察に拘束され、死亡したのを機に、自由を求める抗議デモが国内に広がると、武力鎮圧で応じた。ライシ体制で、イランと米欧との関係は冷え込んでいる。 英紙フィナンシャル・タイムズはライシ師が職務不可能になった場合、モクベル第一副大統領が任務を引き継ぐだろうと伝えた。米紙ウォールストリート・ジャーナルは、イスラエルのハマス攻撃や核計画をめぐるイランの姿勢に変化はないとの見通しを示した。 イラン国営メディアは19日、ライシ師とアブドラヒアン外相が乗っていたとみられるヘリコプターがイラン北西部の東アゼルバイジャン州で異常な着陸をする事故が起きたと伝えた。(三井美奈)