ゴム長靴がヨーロッパに 「買いたい」をつくる
今週のけいナビの特集は、自社の商品やサービスに磨きをかけて新たな価値を生んでいる企業を特集する。まず紹介するのは小樽にあるゴム長靴メーカーの第一ゴムだ。 第一ゴムは1935年に創業し、来年で90年目。北海道内の企業の中では老舗の部類だ。売上高は約10億円で、従業員数は約100人。国内で流通するゴム長靴の99パーセントは海外産で、国産はわずか1パーセントしかないのだが、その1パーセントを担う企業のひとつだ。 創業以来の「国産」「手作り」に今もこだわり続けている。生産数はそう多くはないがファンは多い。一般的なゴム長靴の倍の1万円以上の商品が大半だが、いずれも人気は高いという。 第一ゴムの製品は、高価な天然ゴムの使用割合が高い。通常は合成ゴム9割、天然ゴム1割で作られるが、第一ゴムの成分割合は真逆で9割が天然ゴム。こうしたゴムをパーツごとに張り合わせ、130度から140度もの高温の釜の中で熱を加えることで製品は完成する。天然ゴムならではのしなやかな柔軟性が特徴だ。
ことし8月、ヨーロッパの衣料品大手から引き合いがあり、600足を輸出した。ファッション性の高い商品として受け入れられたという。余市町内に直営店を置くほか、大丸札幌店にも専門の売り場を設けている。藤本賢人社長室長は「手作業にこだわり今後も質の高い製品を作り続けたい」と意欲を見せている。 札幌・中央区にあるストリート系ファッションの洋服を扱うWAKE.(ウエイク)は、SNSやネット販売をほとんど行っていないのに全国からファンが集まる「唯一無二」の店舗だ。 ある土曜日の午後、店舗が入るビルの階段に長い行列ができていた。ここでしか買うことができないという洋服を求める人たちの列だ。 続々と入店する客は、お目当ての商品を丹念にチェックし、時に店員とのコミュニケーションに集中する。ウエイクを運営する小俣弦也店主は、客の顔が見える「対面販売」こそが店の原点との考えを示す。 コロナ禍の直前に店舗を立ち上げ、客足が伸びず苦戦を強いられた経験を持つ小俣さん。古くからのファンとの関係性と、対面販売を大切にする。「こうしたものなら客は好むかなとか、あまり考えない。自分がいいと思うものだけを扱い、それをコミュニケーションを取りながら丁寧に売っていくことが大事」とする。