メガネのフレームが1ミリ太いのは「奇異の念を抱かせる」ので没収 刑務所内でまかりとおる“非常識ルール”の実態
受刑者の眼鏡のフレームが、規定より1ミリ太いことを理由に没収したのは人権侵害――福島県弁護士会は2月6日、福島刑務所に対して内規を改めるよう勧告した。今、全国の刑務所では受刑者の尊厳を守るための改革が進められるなか、同会には、あまりに不当な処遇や行き過ぎた指導を改善してほしいという受刑者の悲鳴が毎月のように寄せられているという。 【写真】福島刑務所の中の様子はこちら * * * 福島県弁護士会に人権救済の申し立てをしたのは、40代の男性受刑者。2021年11月、宮城刑務所から福島刑務所に移送された際の所持品検査で、それまで使っていた眼鏡のフレームが太いことを理由に取り上げられたという。 眼鏡は、業界大手の「眼鏡市場」で販売されていた、スポーツ性能を備える「i-ATHLETE」シリーズ。フレームは黒色で、最も太い「つる」の部分が1.1センチあったのだが、これが「眼鏡のフレーム幅は1センチ以下」と定める福島刑務所の内部規定に反するとして不許可になった。 男性の両目の視力は0.1以下だったが、新しい眼鏡を自費で購入するまでの約3カ月間、裸眼で生活することになった。読書や筆記の際に不便を強いられただけでなく、階段の上り下りなど日常生活にも不安があったという。 県弁護士会によると、刑務所側からは不許可の理由について、下記のとおりの回答があった。 「本件眼鏡は、フレームの幅が1.1センチメートルと著しく広く、他人に奇異の念を抱かせたり、好奇心をあおるものといえる他、所内で使用させた場合、申立人の目線の確認が困難となるなど動静把握に支障が生じたり、目線が遮られることによって作業災害につながる恐れがあると判断した」
■全裸にされ陰部の中を検査 だが県弁護士会は、「フレーム幅が1.1センチの眼鏡は巷(ちまた)にあふれており、宮城刑務所内では許可されていたことを踏まえると、刑事施設の管理運営に支障をきたすとは考えられない」「適切に視力を矯正して文化的な日常生活を送ることは、人格権や生存権として憲法で保障されている」として、今年2月、福島刑務所に内規を改めることなどを求めた。 とはいえ、弁護士会からの勧告は法的な拘束力を持つものではなく、あくまで意見の表明にとどまる。同会によると、その後、勧告どおり内規が改定されたかどうかは確認できていないという。 同会には、受刑者やその関係者が刑務所内での人権侵害を訴える申し立てが、年に10~20件前後届く。調査の結果、今回のように刑務所に対して事態の改善を求めるのは、そのうちの数件だ。同会ホームページでは、刑務所への勧告として、こんな事例が報告されている。 「申立人に対して、『足をあげろ』、『足を引きずるな』などと指示し、軍隊式行進をさせることは、申立人の人権を侵害するものである」 「申立人が娘宛にクリスマスカードを購入しようとしたところ、貴所職員が申立人に対し『お前クリスチャンか?』『クリスチャンじゃないと買えない』と述べ、クリスマスカードの購入を許可しなかったことは人権侵害にあたる」 「申立人~中略~が、福島刑務支所内保護室において全裸にされ、両手を壁に突かされた状態で陰部の中を検査された際に、その一部始終を男性の刑務官がビデオカメラで撮影・録画していたことは、申立人の人権を侵害するものである」