千葉沖の「スロースリップ」“能登半島地震”でも起きていた “ゆっくり滑り”は大地震の前兆なのか
群発地震に伴い、珠洲市では地盤が最大で7センチ隆起し、放射状に広がる地殻変動が観測されました。GPSなどの衛星測位システムを使って地殻変動を観測する研究を20年以上行っている京都大学防災研究所の西村卓也教授も「これほど顕著な変動がみられることは今までなかった」と話します。 京都大学や金沢大学などの研究グループは、珠洲市周辺に観測機器を設置し、解析を続けた結果、地下にある“水のような流体”が地震を引き起こしているのではないかと考えるようになります。 西村教授らによりますと、珠洲市の南側では2018年夏ごろから流体が上昇したとみられています。2020年11月ごろには、大量の流体が供給され、群発地震が活発になりました。流体はその後、珠洲市の地下を走る複数の断層に流れ込み、周りの岩盤を押し広げるだけでなく、断層がゆっくりと滑るスロースリップを引き起こしたと考えられています。 スロースリップによって、断層の周辺で圧力が高まって北側でも地震活動が活発になり、2023年5月5日には最大震度6強を観測するM6.5の地震が発生しました。 ■「海底なら津波も」研究者が再三呼びかけ 2023年5月のM6.5の地震後、研究者の間では大きく分けて2つのシナリオが考えられていました。 地殻変動の解析結果では、全体的な変動は収束する傾向にあり、このままいけば地震活動が徐々に落ち着くのではないかと期待されていました。 一方で、研究者が最も懸念していたのは、沖合にある活断層の存在でした。日本海には、珠洲市の北岸に沿うように、能登半島の西側から佐渡の沖合にかけて活断層が走っていて、流体がこの断層に達した場合は「M7クラスの地震が起こる」とされていました。 金沢大学の平松良浩教授らは、2023年6月に珠洲市で開いた市民向けのシンポジウムで「奥能登は歴史的にM6~7クラスの大地震が発生している。海底活断層で地震が起こると、津波の危険も現実味を帯びてくる」と警戒を呼びかけていました。