なぜ国立競技場は明治神宮外苑に建てられたの?
2020年の東京五輪・パラリンピックのメイン会場となる新国立競技場は、法外な建設費が世間から反発を招き、計画が見直しされることになりました。新国立競技場の建設をめぐって、神宮外苑が改めてクローズアップされています。撤回された当初案には、周辺の神宮外苑一帯の景観と調和しないという声もありました。では、なぜ国立競技場は神宮外苑に建設されたのでしょうか。
明治神宮には「内苑」と「外苑」
旧国立競技場は1964年の東京オリンピックのメイン会場になっていますが、同地はもともと旧青山練兵場跡地と呼ばれる施設でした。明治天皇崩御後、そこに明治天皇・昭憲皇太后のご聖徳を永く後世に伝えるために明治神宮外苑が造営されました。 明治神宮は「内苑」と「外苑」に分けることができます。内苑は、初詣などでたくさんの参拝者が訪れる明治神社があるところです。 他方で国立競技場のあった周辺は、一般的に神宮外苑と呼ばれ、ここが外苑に当たります。 国立競技場のほかにも、神宮球場、ゴルフ練習場、フットサルコート、アイススケート場、秩父宮ラグビー場、といったスポーツ施設などが立地しています。対して内苑は、大鳥居・社殿・拝殿・宝物殿・参道などがあり、これらからも純然たる神社といえます。 どうして明治神宮には、内苑と外苑があるのでしょうか? 「明治神宮は明治天皇・昭憲皇太后、お二方の御神霊をお祀りし、御遺徳を永遠に追慕し、敬仰申し上げたい機運が高まり、内苑は国費で、外苑は国民の寄付によって造営されました」(明治神宮外苑総務部)
神宮外苑は「鍛錬の場で憩いの場」
聖徳記念絵画館は神宮外苑のシンボル的な存在で、館内には明治天皇と昭憲皇太后にまつわる幕末から明治にいたる歴史的な壁画が展示されています。聖徳記念絵画館の周囲にはスポーツ施設が配置されているので、外苑は神社というよりもスポーツや芸術の場といった趣が色濃くなっています。内苑と外苑、ここまで性格が異なる施設になった理由は何だったのでしょうか? また、なぜ神宮外苑にスポーツ・芸術施設が集まったのでしょうか? 「神宮外苑は『国民の鍛練の場であり、憩いの場である』といった創建の趣旨で造営されています。計画当時に各スポーツ団体からの要望があり、それらは創建の趣旨に適合していると判断されて、スポーツ施設が整備されることになりました。ほかにも、音楽を振興する場にしようという提案もありました。厳密には外苑の施設ではありませんが、日本青年館は青少年の修養道場として建設されて、現在はコンサートホールなども備え、音楽の場にもなっています」(同)