「気象庁で初めてのこと」津波観測装置の復旧に奔走した気象庁職員たち 雪のなか岸壁に穴開け【能登半島地震から1年】
「輪島で津波観測を続ける」決断
その後、現地気象台や国土交通省などと情報収集を行い「輪島市なら入れるかもしれない。輪島で津波観測を続けよう」と決断したのは、地震発生から4日後の1月5日だった。 九谷氏たちは、可搬型の津波観測装置を持って7日朝、拠点の富山気象台から、再び能登半島を目指した。 九谷本人の運転で現地向かったが道路は陥没し渋滞もひどく、崖の崩落もあり、なかなか先には進めない。携帯電話の電波も入らないため、現地で誘導している警察官に道を聞いてなんとか輪島へ向かった。 気象庁で津波観測装置の復旧を待っていた、大気海洋部の成澤調査官たちは「とにかく無事で」と祈る思いだったいう。
想像以上の地盤隆起…
富山気象台を出発して6時間半、九谷氏たちはなんとか輪島に到着。 全焼した朝市など輪島の被害状況に衝撃を受けたが、海岸の地盤隆起は想像していた以上で「津波観測システムを設置するのは簡単でない」と思ったという。 気象庁の成澤調査官は「他の省庁も含め復旧に全員が注目していた。九谷たちはかなりのプレッシャーだったと思う」と心の内を教えてくれた。 元々、輪島で設置しようとした場所は破損がひどく、取り付けは不可能と判断。 国交省港湾局が用意した場所を確認すると、観測はできるが観測装置を固定する設備がないと判明。 そこで九谷氏は港の岸壁にドリルで穴を開け、固定用の金具を使い観測装置を設置することを決断した。
「気象庁で初めてのこと」雪のなか3時間作業
普段から可搬型の観測装置の設置は訓練しているが「初見の場所に設置するだけなく、固定する設備がない場所に設置するのは気象庁で初めてのこと」だったという。 慣れない作業に加え、雪が舞い寒さで手がかじかむ。「日没までに間に合うか」と不安がよぎったと明かしてくれた。 気象庁の成澤調査官も午後3時までに設置の目処がつかなければ、撤退も考えていたという。 しかし、午後3時半に何とか設置が完了。 通常であれば1時間の作業に3時間を要した。