「通信設備を永続運用できる枠組みを」 南海トラフ地震や台風接近 デジタルの力で災害に備え
南海トラフ地震の「臨時情報(巨大地震注意)」と台風の接近が重なり、日本列島全体で災害に対する危機意識が高まっている。迫りくる脅威に備え、最新のデジタル技術を活用して津波の発生を検知する取り組みや、通信が断絶した過去の被害を教訓に他社連携でネットワークを維持する試みも進んでいる。 【関連写真】NTT東とKDDIの業務提携のイメージ 今回の巨大地震注意の対象範囲は、茨城県から沖縄県の太平洋側を中心に29都府県707市町村に及ぶ。南海トラフ地震が起きた場合、震度6弱以上の揺れか、3メートル以上の津波に襲われる可能性があるとされる。 津波発生時、正確な潮位の変化の把握は人命を守ることに直結する。NECは、レーザー光で周囲の3D情報を取得する高性能センサー「3D-LiDAR(ライダー)」を使い、遠方から高精度に潮位を測定できる技術を開発した。 現在使われている電波式やフロート式の潮位計測システムは、測定可能距離が20メートル程度にとどまる上、地震で地盤隆起や沈下が起こると潮位の測定が困難なことが課題だった。 NECが開発した新たな測定技術は、3D-LiDARによる赤外線レーザー光を海上に浮かせた浮標(ブイ)に照射し、反射光を捉えて距離を計測する仕組み。技術検証では、陸上500メートル遠方の物体の高さ計測を実現していたが、今回の実証で初めて海上60メートル遠方の潮位を2センチメートル程度の誤差で測定することに成功したという。今後、さらに測定可能距離を伸ばし、2025年度内の実用化を目指す。 一方、19年に千葉県などで発生した台風災害では、引込線や通信ケーブルの垂れ下がり・切断などの「不安全状態」が多数発生した。NTT東日本とKDDIは、こうした不安全状態の早期発見と対策に向け、相互に情報共有する業務提携の範囲を、NTT東日本全県域に拡大している。 両社は、NTT東日本管轄内の電柱から建物につながる引込線のほか、通信ケーブルの垂れ下がり・切断、設備の不安全状態を発見した場合、速やかにケーブルを仮吊りするといった一時改修措置を実施。発生場所と措置内容の情報共有などを行う。 両社は「労働人口減少などの社会課題を見据え、これまで両社それぞれが整備してきた通信設備を永続的に運用できる新たな枠組みなどの検討を進めていきたい」としている。 災害用伝言板サービス開始 8日に宮崎県で震度6弱の揺れを観測したマグニチュード7.1の地震を受け、NTTドコモ、KDDI、ソフトバンク、楽天モバイルの通信大手各社はインターネットで安否に関する情報を登録したり、確認したりできる災害用の伝言板サービスの提供を始めた。 NTT東日本と西日本も音声によるメッセージを登録したり確認したりできる「災害用伝言ダイヤル」の運用を開始。固定電話や携帯電話から「171」番に電話し、自宅や職場などの電話番号を入力するとメッセージを登録できる。登録されたメッセージは171番にかけて、安否を確認したい相手の電話番号を入力すると確認できる。
電波新聞社 報道本部