【MLB】球団の今後を左右する2人の若手投手をパイレーツはケガから守れるのか
【MLB最新事情】 怪物対決とも称される大谷翔平対22歳のポール・スキーンズ。6月5日の初対決では、スキーンズが3球連続100マイル以上の真っすぐで空振り三振に打ち取ったかと思えば、次の打席で大谷がその100マイルを打ち砕きサク越えと、野球ファンを魅了した。 8月10日に再戦。スキーンズは100マイル越えはなかったものの、シンカーとスプリッターを合わせたハイブリッドな球種スプリンカーを多用。一ゴロ、空振り三振に打ち取り、3打席目もカーブで空振り三振と、大谷を抑えた。しかしながらテオスカー・ヘルナンデス、ギャビン・ラックスらほかの打者に打たれ、自己ワースト4失点で敗戦投手になっている。 それでもスキーンズが逸材であることは間違いない。ここまで15試合に先発、92イニングを投げ、6勝2敗、防御率2.25、115三振、20四球だ。野球に向かう姿勢も良い。パイレーツのデレク・シェルトン監督は「ポールは5月にメジャー・デビューしてからどんどん成長し以前とは違うピッチャー。学びたいという意欲が旺盛で、挑戦することをいとわない」と目を細めている。 パイレーツにはほかにも23歳で、直球の平均球速が97.3マイルのジャレッド・ジョーンズがいて1年目の今年、16試合に先発して5勝6敗、防御率3.56。スライダーの空振り率は39.8%で、2球種で打者を圧倒できる。2人がこのまま成長していければパイレーツは間違いなく強くなるだろう。ポイントはいかに球団が2人をケガから守るかだ。 MLB公式サイトのアレックス・スタンプフ記者は「球団は細心の注意を払い、慎重に起用している。登板は中5日だし、特にスキーンズの場合は、大学で4、5カ月のシーズンしか経験していないから、イニング数や球数だけでなく、投げる期間も考慮している。ジョーンズも120イニング以上を投げたことがないから今は中休みを与えている」と説明する。 だが、こうして慎重に起用してもケガは起こる。ドジャースの25歳ルーキー、リバー・ライアンは10日の試合で最速98.3マイルを出し、スキーンズに投げ勝っていたが、5回に前腕に強い張りが出て降板に。翌日MRI検査で右肘損傷が見つかり、シーズン終了となった。 ライアンは元野手だったが22年に投手転向、3年目の今年もマイナーで8試合に登板し24イニング1/3を投げただけだった。それがメジャー昇格後4試合で壊れた。近年は最新のテクノロジーを使い、ピッチデザインの名の下、投手は効率的に球速を上げ、鋭い変化球を投げられる。投手のレベルは著しく向上。しかしながら人間の肘がそれに持ちこたえられない。 スタンプフ記者は「うちにはほかにもヨハン・オビエドという才能ある(26歳の)投手がいるが、去年11月にトミー・ジョン手術を受け、今季は全休。投手のケガの急増はMLB全体の問題。解決策が見つかれば良いが、人間の身体は100マイルの速球を投げ続けるには限界があるのかも」と言う。 大きな筋肉は鍛えれば強くなる。しかしながら肘のじん帯はそうはいかないのである。 文=奥田秀樹 写真=Getty Images
週刊ベースボール