伝説の“バント逆転3ラン”も…信じられない“バントを巡る珍プレー”はこうして起きた!
6月25日のオリックス対ソフトバンクで、6回無死一塁、ソフトバンク・今宮健太の送りバントが一塁悪送球を誘発。ボールが右翼線を転々とする間に、一塁走者・周東佑京に続いて今宮も生還する“バント2ラン”の珍事となった。そして、過去にもバントをめぐる珍プレーが何度となく見られている。【久保田龍雄/ライター】 【写真で振り返る】あなたは何人わかる? プロ野球監督別リーグ優勝回数ランキングベスト10(1990年~2022年) ***
コアなファンに語り継がれる約40年前の“バントホームラン”
“バントホームラン”といえば、今でもコアなファンの間で語り継がれているのが、巨人・篠塚利夫の“バント逆転3ラン”である。 1982年9月15日の中日戦、1回表に2点を先行された巨人はその裏、連続四球で無死一、二塁のチャンスをつくると、3番・篠塚が定石どおり、投前に転がした。 打球を処理した郭源治は、捕手・中尾孝義の指示どおり、三塁に送球したが、グラウンドが雨でたっぷり水を吸い込み、足場が悪くなっていたことから、「(三塁を)振り向いたとき、マウンドが柔らかくて、足が滑ってしまった」。 郭の送球は、サード・モッカも捕球できないほど大きくそれ、三塁側フェンスに転がっていった。さらにカバーに入ったレフト・大島康徳もクッション処理を誤り、後逸したからたまらない。 ボールが無人のレフトを転々とする間に、二塁走者・島貫省一、一塁走者・河埜和正に続いて、篠塚もホームイン。3対2と一気に逆転した(記録は犠打野選とエラー)。巨人ベンチは爆笑の渦で、「オレ、笑い過ぎてアゴが外れちゃったよ」(中井康之)の声も出るほど。 勢いづいた巨人はこの回一挙5得点で試合の主導権をガッチリ握ったかに思われたが、終わってみれば、7対7の引き分け。そればかりでなく、この日の時点で3.5ゲーム差をつけていた2位・中日にわずか0.5ゲーム差で逆転優勝を許してしまうのだから、野球は最後の最後までわからない。これも笑い過ぎた代償か?
100メートル10秒台の俊足で一気にホームイン
“もうひとつのバントホームラン”と言うべき珍プレーが見られたのが、1999年4月16日の西武対日本ハムである。 2対2の延長10回、日本ハムは先頭の金子誠が四球を選んで無死一塁。次打者・井出竜也は送りバントを試み、投前に転がした。 打球を処理した森慎二は、二塁は間に合わないと判断し、一塁に送球するつもりだったが、捕手・伊東勤が「ギリギリ間に合う」と二塁を指示したことから、手違いが起きる。 森が慌てて二塁に送球すると、力み過ぎが災いしてか、ボールはベースカバーのショート・松井稼頭央の頭上を遥かに越える大暴投となって右中間フェンス際まで転がっていった。 この間に一塁走者・金子に続いて、100メートル10秒台の俊足を誇る井出も一気に生還。“決勝バント2ラン”となった(記録は犠打野選とエラー)。 思いがけずヒーローになった井出は「疲れた。あんなことは野球をやって初めてのこと」と振り返り、上田利治監督も「バントで、たった2人で2点は、棚からぼた餅や」とニンマリだった。 “バントホームラン”には1歩及ばなかったが、ソフトバンク・嶺井博希も昨年10月1日の日本ハム戦、1対1の2回1死三塁、捕前スクイズ直後のダブル悪送球に乗じて三進。“スクイズ三塁打”となった。