〈自民党選挙裏金疑惑〉「幹事長3300」と書かれたメモの存在を問われた瞬間、口ごもった二階氏、そして繰り返された「案里って何者なのよ」…中国新聞、渾身の調査報道の舞台裏
ばらまき 選挙と裏金 #3
2019年に起きた河井夫妻選挙違反事件。政治家の河井夫妻が自ら現金を配って回った前代未聞の買収事件だが、その原資が安倍政権の幹部たちから提供されていた疑惑があった。 【画像】「総理2800 すがっち500…」中国新聞による実際のスクープ記事 不透明なカネの問題に切り込んだ中国新聞による渾身の調査報道の裏側を、『ばらまき 選挙と裏金』より一部抜粋・再構成してお届けする。
激しい雨の中、マンションの入口で菅の帰宅を待ち続けた
夜になり、国会記者会館の会議室で記者の河野が頭を悩ましていると、取材班のメンバーがあるネット記事を見つけた。自民党の菅義偉が7日に仙台市で講演し、持論のライドシェア解禁について語ったというニュースだった。 菅はこの日、仙台市へ出張していたのだった。国会内を探しても、取材できるわけがなかった。中国地方の情報網を強みとする中国新聞にとって、東北地方の情報はなかなか手が届かない。「出張予定の情報が入っていれば、菅に直撃できたのに」。出張の情報を得られていなかったことを悔やんだ。 だが、まだチャンスがあるのではないかとも感じてきた。ネット記事を見ても、何時から何時まで講演したかは書かれていなかった。もし午後に講演して、仙台市から新幹線で自宅に帰ってくるとすれば、自宅で待っていれば、菅に直接取材ができるのではないか。 「やれることは全てやろう」。 この東京出張の取材で心がけていた言葉が頭に浮かんだ。「菅さんの自宅に行ってみます」。荒木にそう告げると、荷物をまとめて出発した。国会記者会館の周辺でタクシーを拾い、横浜市へ急いだ。この日の夜は東京に台風が近づき、激しい雨が降っていた。 もし河野が菅の自宅に到着するより、菅が自宅に帰る時間が早ければ、そのまま自宅から出ない可能性が高く、取材は難しい。高速道を走るタクシーの後部座席で焦る気持ちを募らせていた。約1時間をかけて到着すると、マンションの入り口で菅の帰宅を待ち続けた。 だが、菅の車が戻ってくることはなかった。やはり菅は仙台出張から既に帰宅したのかもしれない。「やれることはやった」。そう自分に言い聞かせたものの、結果が出なかったことへの悔しさも残った。8日は菅への直撃に全力をかけることにした。
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