「縛られない働き方に憧れる」会社勤めの彼の盲点 キャリアを歩むうえで、一貫性があるかどうか
ただし、その時々にチャンスがあるかどうかがわからないことに加えて、一貫したスキルや経験も積みにくい、という側面はあります。 ご存じのとおり、キャリア上の経験やスキルの蓄積という意味においては、一貫性やその中における成長、といったものが非常に大切なのですが、渡り鳥的な生き方では、その双方における継続性を担保できない、またはしにくい、という側面はあります。 人生もキャリアもそうですが、「攻め」だけではなく、「守り」も大切です。守りとはイザというときの備えであり、プランBのようなものであります。つまりは、自分にとっての現実的な選択肢を持っているか否か、です。
経済が好調だったりするときは、職業上の機会は幅広く提供されますが、つねにそうとは限りません。 そうであれば、一職業人としては、やはり職業上の機会が限られているような状況でも立ち回れるような経験やスキルを蓄積し、イザというときにも備えておきたいものです。 「自由」や「誰にも縛られない働き方」という言葉を、NTさんは使われていますから、おそらくその趣旨としてはご自身のキャリアや人生において、つねに複数の選択肢を有していたいし、そういった状況をご自身の経験やスキルを通じて構築したい、という考えが背景にあるように思えます。
複数の選択肢を有していることはもちろん非常に大切なのですが、その選択肢はどこから提供されているか、も同時に考えたほうがよいでしょう。 頂戴した相談に書かれていた事例は、NTさんの努力やスキルによって提供される選択肢ではなく、外部環境によって提供される選択肢です。 つまり、先ほど述べたような外部環境の重なりがあって、「たまたま」現在あるチャンスなのです。そしてこれも「たまたま」そういった選択肢が複数あるように見えている状況なのです。
■努力で勝ち取った選択肢ではない 重要なのは、「NTさんの努力やスキルによって提供された選択肢ではない」という点です。それらの選択肢は、自ら勝ち取ったものではなく、外部環境により「与えられた」選択肢です。 そのように考えると、「自由」や「自分自身の裁量」を重視したいNTさんの考えとは、そぐわないのではないでしょうか。 自分自身の人生やキャリアを、自分自身の自由裁量によってできる限りコントロールしたい、という要望があるにもかかわらず、選択肢が外部環境次第では矛盾が生じてしまいます。