「僕が勝たせてあげられなかった…批判は受けます」日本シリーズ進出を逃した巨人・阿部慎之助監督の“経験不足”…敗れるなりの理由があった
どこか普段通りでなかった巨人ベンチ
とにかくこのファイナルステージでは、巨人ベンチがどこか普段通りではなかったことが気になってしまった。1、2戦のオーダー編成もそうだが、采配、選手起用でもこんな場面があった。 1対2で敗れた第2戦、1点を追う7回の場面である。 この回は先頭の6番・浅野翔吾外野手が遊邪飛、続く門脇誠内野手も三ゴロに倒れてあっさり2死となってしまう。しかしここで8番の小林誠司捕手が四球を選んで出塁すると、ベンチは先発の菅野智之投手に代打・秋広優人内野手を送った。 追いかける身としては、ここまでは常道の決断である。だが、果たしてこれだけで良かったのか。いつもの阿部監督なら、ここで一塁走者にも代走を送って万全の策を講じているはずの場面ではなかったのかということだ。
シーズン中の阿部監督なら代走を送っていた
改めて状況を考えてみよう。 1点を追う終盤。秋広にホームランが出ればそれで良しだ。ただ長打が出た時に小林の足でホームまで還ることができるのか。ベンチには走塁のスペシャリストの増田大輝内野手が残っていた。 ここで増田を代走に送れば、盗塁という一手も考えられるし、DeNAバッテリーの配球も真っ直ぐ系を軸にしなければならなくなってくる。何より1点負けている状況を考えれば、その1点をもぎ取るために全ての策を尽くすべきであり、尽くすのが阿部野球だったはずだ。シーズン中の阿部監督なら、ほぼ抜かりなく代走を送っていた場面。結果的には秋広があっさり3球で空振り三振に倒れて、何も起こることはなかった。 ただ、シリーズを振り返ってみれば、こうした細かなベンチワークのほつれがいくつかあったことは見逃せないところだった。だから「9月からはベンチの戦いや」という星野監督の言葉を思い浮かべることになったのである。
チーム、監督の経験不足
結果的には最初の3連敗がすべてだった。 「そこがやっぱり(敗退に)響いちゃいますよね。だけどやっぱりこうやって逆王手までいって……いったということも、すごい収穫だと思います。負けた悔しさはその何十倍もあるんですけどね」 阿部監督はこう語って取材を終えた。 球団創立90周年のメモリアルシーズンで見事にペナント奪回を果たした。監督1年目で見せたチームを掌握する力、思い切った選手起用、采配力……。もちろん選手の働きが一番の力だが、この監督がそういう選手の力を引き出した手腕、マネジメント力は改めて高く評価されるものだろう。ただまだまだチームにも、ベンチにも、経験が不足した。来季に向けてこの経験をどう活かしていくか。そのことを改めて教えてくれた巨人の敗北でもあった。
(「プロ野球亭日乗」鷲田康 = 文)
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