化石研究の醍醐味 太古の魚の歯からあらわにする自然界の「隠された美」
発生段階と進化のプロセスの関係性「太古の魚に息を吹き返す瞬間を求めて」
筆者:それはかなりの根気の要る作業のようです。それでは一番エキサイティングだった点は、何だったのでしょうか? チェン女史:解剖学上の非常に細かな特徴を発見した時です。特に(シンクロトロンなど使って)それまでにあまり知られていなかった形態など解明した時は、非常にエキサイティングな瞬間です。私にとって自然界における「ヒドゥン・ビューティー(隠された美)」をあらわにした瞬間ですね。 筆者:なるほど。化石研究ならではの醍醐味のようです。 チェン女史:こうした解剖学上の特徴をもとに発生段階と進化のプロセスとの大まかな関係性をつかんだ時は、大げさに言わせていただくと「太古の魚に息を吹き返させてあげた」という感覚にも襲われます。 筆者:生物進化の謎の解明が研究の軸としてあるということですね。ところで今回の研究(脚注2)の大きな発見の一つに「硬骨魚類の歯の抜け替わりパターン」の起源があります。そしてこのアンドレオレピィスにみられるパターンが、後に進化上出現する(人間を含む)四足動物のモノとも似ているという事実が非常に興味深いところです。 チェン女史:そうですね。そしてサメ等の軟骨魚類はまた違った抜け替わりのパターンを持っていたようです。 筆者:サメなどの軟骨魚類の一部は原始的な魚のグループとして考えられています、具体的にどのように違うのでしょうか? チェン女史:サメ等の場合これから使われる新しい歯が何重にもアゴの骨の表面に現れています。横にスライドして次から次へと抜け替わる準備が出来ています。 筆者:サメの口の映像など思い出しました。「ジョーズ」等の映画でも馴染みがあります。準備中の歯の先端が多数、所狭しと口の中に見ることができます。一方、硬骨魚類や四足動物などは、今回の論文で指摘されているように新しい歯がアゴの骨の中に隠れています。そして上へ押し上げることによって古い歯が抜け落ちる感じなので、確かに大きく違うようです。しかしこれだけ大きな抜け替わりのパターンに違いがあるということは、脊椎動物の「歯の起源」の謎についても迫れるかもしれませんね!