Jリーガーでアルバイト生活の現実、「年俸460万円以下」に縛られる若手…報酬制度「ABC契約」の見直し機運高まる
■ 若手を年収460万円以下に縛る「ABC契約」 Jリーグでは、通称「ABC契約」と呼ばれる制度に基づき、選手と各クラブが契約を結ぶ。契約の種類にはプロA、プロB、プロCの3パターンがあり、プロAまたはプロBとして契約するためにはプロリーグの試合へ一定時間出場するなど選手としての実績が必要となる。 そのため、高卒や大卒などで新しくプロサッカー選手として契約する場合には、プロCでの契約からスタートすることが一般的だ。 プロBやプロCの契約では、年間の基本報酬が460万円を超えてはならないと定められている一方、最低年俸額の規定はない。その結果、J2やJ3のクラブでは低い年俸で契約が結ばれるケースが少なくないという。 Jリーガーたちの厳しい懐事情を、サッカー雑誌『footballista』が2023年8月に報じている。日本代表を務めた経験のある吉田麻也氏がインタビューで「ABC契約」の課題点について言及。毎月の報酬が20万円を下回っている選手も少なくないことを明かしている。アルバイトなどをしなければ生活できないほどの待遇しか得られないケースもあるという*2 。 *2:JPFA会長・吉田麻也が訴える「時代と現実にそぐわない」ABC契約の問題点(footbalista)
■ 海外クラブとの人材獲得競争も 吉田氏によれば、J3のクラブではプロA選手の最低契約人数が決まっておらず、年俸の下限が設定されていないプロBやプロCの選手のみでチームを構成できてしまうという問題もある。資金力のないクラブが選手の年俸を低く抑え、選手の待遇が改善されにくいという。 A契約についても、初めて契約する場合は基本報酬が年額670万円を超えてはならないと規定されている。海外クラブとの獲得競争が繰り広げられるなか、優れた選手の「海外流出」が加速しかねない。 【関連資料】 プロサッカー選手の契約、登録および移籍に関する規則(日本サッカー協会) Jリーグのチェアマンを務める野々村芳和氏は2024年2月に行われた「2024 Jリーグ開幕 PRイベント」で、ABC契約制度の見直しに着手すると発言している*3 。海外クラブへの移籍など選手のキャリアパスが多様化してきている中で、Jリーグが活動の場として選ばれるような環境作りを進めたい考えだ。 *3:30年後「Jリーグが世界一のリーグになる」|野々村芳和チェアマンスピーチ(ノーカット)|2024Jリーグ開幕PRイベント(JリーグのYouTube公式チャネル)
杉原 健治