逆転勝ちの立役者、満身創痍の琉球ゴールデンキングス今村佳太を突き動かした原動力「自分を必要としてくれる気持ちに応えたい」
「自分たちのことにしっかり集中して戦っていくことが大事だと思います」
当然だが、この3試合の今村は本調子ではなかった。普段の彼は、攻撃の起点となりつつ外国籍フォワードを含めた相手のエーススコアラーのマークにつき、大黒柱として攻守で多くの役割を担っているが、このシリーズでは役割、出場時間ともに限定せざるを得なかった。 だが、その中で持てる力を出し切り、特にシューターとして大きなインパクトを与えた。「やれることが限られている中、キャッチ&シュートはできることだったので狙っていこうと。特に前半は、ここで流れができればそこで自分の仕事が終わってもいい、というくらいの気持ちでした」 万全でない中で試合に出ることで、故障を悪化させてしまう可能性はある。本来の力を出せない中でコートに立つことで、チームのリズムを崩してしまうかもしれない。そういったリスクを十分に認識しながら、それでも今村は満身創痍の中でプレーすることを選択した。 この覚悟の根底にあったのは、『自分は琉球のエースだ』という矜持だったのか。こちらの問いに対し、今村は「もちろん、そういう気持ちがなかったと言ったら嘘になります」と答え、それ以上に彼を突き動かしたのは純粋なチーム愛であり、高い忠誠心だったと明かした。 「何よりもチームメート、ブースターの皆さん、琉球ゴールデンキングスに関わる皆さんが自分を必要としてくれた。やっぱりその気持ちに応えないといけないという思いでコートに立とうと思いました。試合を通して迷惑をかけてしまう部分もありました。それでも自分を必要としてくれる限りは応えたい。この気持ちが、足の痛い中でも、突き動かしてくれた原動力になりました」 ファイナル連覇を目指して対戦するのは広島ドラゴンフライズとなる。広島のエースは、2022年に琉球を初のファイナル進出に導いたドウェイン・エバンスだ。 「Bリーグファイナルという素晴らしい舞台で、今度は対戦相手としてかつてのチームメートと対戦するのは楽しみで、素晴らしい機会に恵まれたと思います」。このように、かつての盟友との大一番での対決を語る今村だが、勝利の鍵は自分たちにベクトルを向けることと考える。 「広島さんは本当に勢いのあるチームで、難しい戦いになると思います。ただ、特にこのチャンピオンシップは相手が誰であろうと、自分たちがやっていかないといけないことにフォーカスしたことで結果が出ています。自分たちのことにしっかり集中して戦っていくことが大事だと思います」 ファイナルにおいても、立ち上がりでいかに自分たちのリズムをつかむかは勝敗を分ける大きなポイントとなる。琉球が引き続きファーストパンチを相手に食らわせるためには、例え万全でなくても今村の存在は重要だ。
鈴木栄一