神田正輝と高島礼子が鬼気迫る演技で人間の危うさを表現した映画「さまよえる脳髄」
25歳でレースクイーンから転身し、今年、女優デビュー35年を迎えた高島礼子。変わらぬ美貌と磨かれてきた演技力は60歳を迎えても健在。2024年もドラマや映画への出演を重ねるなど、芸能界で輝き続けている。 そんな高島は、2025年1月4日(土)のテレビ朝日ドラマプレミアムで17年ぶりに復活する「新・暴れん坊将軍」への出演が発表されている。実は、「暴れん坊将軍」は彼女にとって本格的に女優として歩み出す第一歩となった思い出の作品でもある。1988年の「暴れん坊将軍Ⅲ」では松平健演じる徳川吉宗を支える御庭番の梢として出演していたが、今作で演じるのは"め組"の頭である辰五郎の妻・おさい役。35年が経って役柄も大きく変わったが、円熟味を増した演技でどんな活躍をしてくれるのか今から楽しみだ。 そんな高島が、神田正輝と共演した映画が「さまよえる脳髄」(1993年公開)だ。 人間の脳は左脳と右脳が異なる役割を担い、脳梁という左脳と右脳をつなぐ線維束によって情報を伝達しあっている。この脳梁が何らかの形で損なわれてしまった状態の脳は分離脳と呼ばれる。例えば右脳で得た視覚情報が言語機能をつかさどる左脳に情報伝達できず、認識していながらも言葉にすることができなかったり、左脳と右脳が独立した意識が生じているような行動をとったりするという。 このように、人間の精神状態は非常に脆く、ふとしたきっかけで思いもよらぬ行動を起こすことがある。本作はそんな人間の精神の危うさを浮き彫りにした逢坂剛の推理小説を映像化したエロティック・ミステリーだ。 ■誰もが陥り得る人間の危うさを表現 高島が演じるのは、違法薬物事件を担当する刑事・海藤(神田正輝)の恋人で、精神神経科の医者である南川藍子。 海藤はある麻薬取引の現場で犯人ともみ合いになった際に、地面に頭を強くぶつけて脳挫傷を発症。その後遺症によって、自分をコントロールできなくなってしまう。 海藤に生じた異変によって、やがて藍子の身にも危機が迫る。2人の情事の途中、海藤が藍子を危うく絞め殺しかけてしまい、海藤は自分の意思に反した行動に困惑する。ここで神田が見せる狂気じみた演技は鬼気迫るものがあり、自分で自分がコントロールできない恐怖をまざまざと感じさせてくれるのはさすがだ。 また、藍子も首を締められている最中に過去のトラウマがフラッシュバックし、気づかぬうちに精神が不安定になってしまう。物語の終盤には二重人格を思わせる描写があるが、思わずゾクッと恐怖を感じさせられる演技からは高島の大女優としての片鱗がうかがえる。 他人事ではなく、自分の身にもこうしたことが起こるかもしれない...。 フィクションを通り越して、そんな真実味すら感じさせるのも高島、神田の演技が核心をついているからに他ならない。 文=安藤康之
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