プロは野球を始めたころからの夢

早大・印出は2年春から正捕手。3年秋までは苦い経験をしてきたが、すべてを糧に「勝てる捕手」へと成長した。写真は先頭打者の4回表に中前打。石郷岡の適時二塁打で2点目のホームを踏んだ[写真=矢野寿明]

【10月21日】東京六大学リーグ戦第6週 早大2-0明大(早大2勝1分け) 　6勝1敗1分け、勝ち点3の相星決戦で迎えた明大戦。早大は2勝1分けで勝ち点4を挙げた。3試合で5失点に封じた立役者は正捕手の主将・印出太一(4年・中京大中京高)である。 【選手データ】印出太一 プロフィール・寸評 　背番号11を着ける伊藤樹(3年・仙台育英高)は、8回無失点で今季6勝目。8回1失点に抑えた1回戦に続く白星である。エースと司令塔、バッテリーの呼吸が合っていた。 「入念に、入念に準備してきた。その成果が出た。伊藤樹は考えて投げるピッチャー。サインに首を振ってきますが、サインで会話している。1球1球、意図を持って投げている」 　早大は春秋連覇へ「マジック1」とした。明大が第8週の法大戦で1敗した時点で、早大のリーグ優勝が決まる。明大は連勝すれば、Vへの望みがつながる。早大は第9週の慶大戦で、1勝すればリーグ制覇が決定。明大が法大戦で連勝し、早大が慶大戦で連敗したに際は同率となり、両校の優勝決定戦となる。 　印出は言う。 「今までの早稲田は、ここ一番で勝ち切れない。負けグセがついていました。勝つためにはデータを含め、勝てるキャッチャーであることを証明することが大事でした」 　早大は11月9日から最終カードの慶大戦を控えるが、10月24日にはドラフト会議がある。印出はプロ志望届を提出している。 「野球を始めたころからの夢。待つだけ。信じたいと思います」 　中京大中京高、早大を通じて「主将・四番・捕手」。名門校で築いた人間性は、誰もが認める。早大・小宮山監督は「元プロ視点」で、チームリーダー・印出の良さをこう語る。 「送り出すことで言うと、もうワンランク、すべての面でレベルアップすることが必要。視野の広さ、抜群のキャプテンシーがある。テクニカルについては物足りないが、リーダーシップを評価してもらえれば。扇のカナメにはうってつけで、任せて良い選手です」 　明大は150キロ超の複数投手を擁する一方で、早大には大台突破する投手は皆無。データ班3人が寝る間を惜しんで作成した資料を最大限に参考にし、生の情報も加えながら、配球力で勝負を挑んできた。頭脳明晰。印出には打者を見る目、分析力がある。そして、投手の良さを引き出す好リード。多くの場数を踏んでおり、チームの役に立つはずである。 文=岡本朋祐