『降り積もれ孤独な死よ』顔に傷のある男がついに正体を明かす 吉川愛の担った役割
物語を動かす2人のファム・ファタール(運命の女)
サプライズ要素がふんだんにあった第9話だが、今作におけるヒロイン花音の立ち位置があらためて明らかになった。謎を秘めた女性である花音は、第9話の段階に至るまでその生い立ちや交友関係の全貌が明らかにされておらず、数々の伏線がちりばめられた今作で、それらは花音というキャラクターを中心に張りめぐらされていたと言っても過言ではない。 具体的には、冴木の前に事件の重要参考人として現れた花音は、灰川邸事件をめぐって冴木と行動を共にする中で、互いになくてはならない存在として認知される。瀬川の花音を守るという決意は一貫してはいるものの、花音は瀬川に対して知らないそぶりを見せる反面、瀬川は花音のために犯罪を犯すなど瀬川の献身は不釣り合いで、報われたとは言いがたい。俗に言う「ファム・ファタール(運命の女)」である花音は男たちを翻弄し、男たちが身を滅ぼす構図が今作のベースにあり、その上で縦横無尽にミステリーが展開されている。 花音を守ろうとしたことは灰川も同様で、灰川も花音によって人生が変わったといえないだろうか。同じ観点からは、花音以外にもう一人「運命の女」と呼べそうなキャラがいる。健流の母・陽子(長谷川京子)に黄色いカーネーションを送っていたのは灰川で、のちにマヤがそれを引き継ごうとした。マヤの死後、黄色いカーネーションは例年通り送られているようだったが、実は自ら購入していたという事実。そもそも健流をのぞく5人が健流の死を知り、灰川も知っていたとすれば、陽子にカーネーションを送るのは健流の死を偽装するためと考えることも可能である。 しかし、誰も送らないカーネーションをあたかも息子から送られてきたかのように自ら装う、という陽子の行動は不自然である。まるで以前から健流の死を知って、灰川たちがカーネーションを自分に送るのを好きにさせていたようにも見える。裏では5人の命を狙って犯行を重ねていたのだろうか。ドラマ終盤で登場したサイコキャラに妄想が止まらない。 ※記事初出時、掲載写真に誤りがありました。訂正の上、お詫び申し上げます。
石河コウヘイ