海外文学として異例の36万部突破 『百年の孤独』の著者ガルシア=マルケスの長編第2作が文庫化
新潮文庫が、コロンビアの小説家であるガブリエル・ガルシア=マルケスさんの小説『族長の秋』を、2025年2月28日(金)に刊行する。訳は翻訳家の鼓直さん。 【画像】煌びやかな装丁も話題となった『百年の孤独』文庫版 この小説は、2024年6月に刊行され36万部を突破した『百年の孤独』文庫版に続くガブリエル・ガルシア=マルケスさんの長編第2作。 長らくハードカバーしか存在しなかった前作の文庫化は大きな話題に。発売前から重版が決定し、海外文学として異例の売行きが続くだけに、第2作も大きな反響を集めそうだ。
「魔術的リアリズム」を知らしめたガブリエル・ガルシア=マルケス
ガブリエル・ガルシア=マルケスさんは、初の長編『百年の孤独』を1967年に発表。 世界的なブームを巻き起こし、ラテンアメリカ文学というジャンルと「魔術的リアリズム」という手法を世界に知らしめた。 1982年には、『百年の孤独』への評価を主としてノーベル文学賞を受賞。2024年6月に文庫版が刊行されると品切れが続出し、刊行後にも大規模重版が決定するなど注目を集めた。 なお、『百年の孤独』は12月11日(水)から、Netflixで初の実写ドラマ版の配信が控えている。
悪行を繰り返す独裁者を「自身の写し鏡として描いた」
新たに文庫化される『族長の秋』は、1967年の『百年の孤独』刊行から8年後の1975年に発表された作品。 幼年時代に、独裁者の奇妙な評伝を憑りつかれたように貪り読んだというガブリエル・ガルシア=マルケスさんが、悪行を繰り返す独裁者の素顔を複数人物の語りによって描く。 ガブリエル・ガルシア=マルケスさんによれば、『百年の孤独』の冒頭から登場する主要人物である「アウレリャノ・ブエンディア大佐のその後を描いた」とも、「自ら自身の写し鏡として描いた」とも語られている。
筒井康隆も「おれのお気に入り」と強く推薦
日本では1983年に、鼓直さんの翻訳により集英社から刊行されていた『族長の秋』。 この他、2011年までの間に、いくつかの作品集への収録や集英社文庫からも刊行されてきた。 また、新潮文庫での『百年の孤独』の文庫化の際には、書き下ろされた解説で小説家・筒井康隆さんが『族長の秋』について言及。 「カストロと親交のあったマルケスならでは」と評価した上で、「実はおれのお気に入りは、マルケスが本書の八年後に書いた『族長の秋』なのである。文学的には本書の方が芸術性は高いのかも知れないが、その破茶滅茶度においてはこちらの方が上回っている」と、強く推薦している。 「百年の孤独」を読まれたかたは引き続きこの「族長の秋」もお読みいただきたいものである。いや。読むべきである。読まねばならぬ。読みなさい。読め。筒井康隆 - 新潮文庫『百年の孤独』解説より なお、海外文学を巡っては、2024年8月に作家のジェイムズ・ジョイスさんによる『フィネガンズ・ウェイク』の邦訳版が刊行。難解さと奇天烈さで“文学の極北”と評される作品が待望の復刊を果たすなど、世界文学は大きな盛り上がりを見せている。
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