「八十八夜」よりもひと足早く新茶を味わえる、鹿児島の「走り新茶」って?
コロカルニュース
■「新茶の季節」っていつ頃? 新しい年度を迎えて大忙しの春は、気持ちもなかなか落ち着かないもの。「今日はちょっと疲れたな……」という日は、おいしい新茶とお気に入りのスイーツでリラックスしませんか? 【写真で見る】一番茶の新芽若葉だけでつくる「若蒸煎茶」。美しい黄金色が特徴。 「今年の新茶ってもうお店にあるの?」と思われるかもしれません。手あそびの歌として有名な茶摘みの歌は「夏も近づく八十八夜」という歌い出しからはじまりますが、「八十八夜」とは立春から88日目のこと。今年なら5月1日前後に、その年の茶摘みが始まるのが一般的です。 ただし、茶摘みは桜前線と同じように、南から順に始まります。そのため、八十八夜よりも早くいただける新茶があるんです!それが、鹿児島から届く早摘みの「走り新茶」です。 ■お茶の生産量が全国第2位の鹿児島県 南国ならではのあたたかい温暖な気候を利用して、1年中さまざまな品種のお茶が生産されている鹿児島。豊富な日射量によるカテキン類(渋味成分)の増加に加えて、摘みとり前に遮光資材で被覆をすることでアミノ酸(甘味成分)の増加を促し、甘みと渋みのバランスがとれた、濃厚でコクのある風味をつくりだしています。 県内での茶業がさかんになったのは昭和後期からと、意外にも最近なのですが、現在では静岡に次いで国内2位の生産量を誇ります。2019年にはお茶の産出額で静岡県を追い抜き、国内1位になったことも。 薩摩半島南部の南九州市でつくられる頴娃茶・知覧茶が有名ですが、種子島や屋久島などの離島ではなんと3月から収穫が始まっているのだそう。そんな「走り新茶」は、縁起の良い“初物”としても人気が高く、もちろん、一番摘みのおいしさもギュッと凝縮されています。 参考:かごしま茶navi ■生産者に聞く、お茶づくりのこだわり 鹿児島県北西部のさつま町でも、4月上旬からお茶摘みが始まります。紫尾山(しびさん)の麓にある茶畑で良質な茶栽培に取り組んでいる、柳田製茶の柳田直樹さんにお話を伺いました。 「おいしいお茶がつくられる場所は、気温の寒暖差が大きいといわれています。さつま町の中心には川内川が流れているのですが、霧が川に沿って流れていく『川内川あらし』という、とてもめずらしい気象現象が起こります。霧の発生は寒暖差があることの証明で、お茶を栽培するのに適した土地なんです」 そんな地理条件のもと、一番茶の新芽若葉だけでつくったのが「若蒸煎茶」です。「摘みたてのやわらかい新芽を製茶工場に運び、一瞬で蒸して発酵を止めることで、お茶本来の風味と香りを引き出しています。煎茶は緑色のイメージがあると思いますが、若蒸煎茶は美しい黄金色が特徴。特に、極早摘みの新芽若葉だけでつくった『若蒸煎茶 上煎茶』は、上品な旨味と芳醇な香りが楽しめる最上級品です」 つまり、早い時期に摘まれた茶葉が一番おいしい、ということなんですね。昔から「走り新茶」が珍重されてきたのも頷けます。 一番茶の時期が終わったら、5月以降は二番茶・三番茶・四番茶とつづき、秋冬番茶をつくるお茶畑もあるなか、柳田製茶では一番茶のみを使用。摘みとりは年1、2回に限定しているそうです。 「次の年も質の高いお茶をつくれるよう、茶の木に無駄な力を使わせないためです。茶摘みの時期が終わったら葉を切り落として、枝の本数や太さを揃えて、木をつくる、土をつくることに専念します」 そうして丁寧につくられた若蒸煎茶は、来客用・贈答用にもぴったり。ギフト用の箱入りタイプもありますが、コンパクトなティーバッグタイプもちょっとしたプレゼントとして喜ばれそうなかわいさです。