流行入りのインフルエンザ 鼻噴射ワクチン導入進む 子ども対象、痛みや腫れ回避
静岡県内で例年より早く流行入りした今季の季節性インフルエンザ。今季から多くの医療機関で鼻に噴射する経鼻ワクチン「フルミスト」の接種が2~18歳を対象に始まった。発熱や鼻水、鼻づまりなどの副反応がある一方で、注射に比べて痛みや接種による腫れが回避できるなどメリットも多く、選択する子どもは増えそうだ。 県は1日、直近1週間(10月21~27日)の定点医療機関1カ所当たりの患者数が1・56人(前週1・06人)になったと発表した。小中学校、高校の計9校が学級閉鎖した。本県は10月25日、記録が残る2006年以降で3番目に早く流行が始まった。例年は11月中旬から12月頃にかけて流行入りし、翌年1月中旬から2月上旬にピークを迎えている。 経鼻ワクチンは毒性を弱めたウイルスを使った生ワクチンで、国内では昨年3月に薬事承認された。鼻に噴射することでウイルスの侵入経路である鼻腔(びくう)の粘膜や気道にウイルスを防御する抗体をつくる。従来の注射タイプの不活化ワクチンと同程度の発症予防効果があるとされる。 静岡市駿河区のキッズクリニックさのでは、2014年から経鼻ワクチンを個人で輸入し、例年400人ほどが接種を受けてきた。接種者のデータなどを集めて研究してきた佐野正院長は「子どもの予防効果は高く、発症しても軽症が期待できる。効果の持続性も高い」と説明する。今季は既に500人の予約が入っているという。 不活化ワクチンは12歳以下の場合、2回接種が推奨されるが、経鼻ワクチンは1回で済む点を利点に挙げる声もある。毎年経鼻ワクチンを接種している小学3年の四柳葉菜子さん(9)=同区=は「注射と違って緊張しなくていい」と話す。佐野院長は「痛みに敏感だったり、接種後に腫れやすかったりする子どもには恩恵となる」と語る。 日本小児科学会は、経鼻ワクチンを不活化ワクチンと同等に推奨する。一方で、毒性の弱いウイルスを使っているため、ぜんそく患者や授乳中の女性、周囲に免疫不全者がいる場合などは不活化ワクチンを勧めている。経鼻ワクチンの接種後数日間は、インフルエンザの検査で陽性反応が出る可能性があり、注意が必要となる。 (社会部・佐野由香利)
静岡新聞社