「腸活は20代からスタートすべきなんです」腸の第一人者、小林弘幸医師インタビュー──連載:教えて!GQドクター
「腸活」ブームが続いているが、間違った情報も少なくない。腸の第一人者、小林弘幸医師に正しい腸の整え方を訊いた。 【写真を見る】腸をきれいにするとメンタルもよくなる?
腸活はいつ始めればいい?
ダイエットに免疫アップ、自律神経を整えるなど、健やかな毎日を送るために欠かせないのが、腸内環境を整えること。近年「腸活」という言葉を聞かない日はないくらい広く知られるようになったが、なぜ、腸内細菌はそんなに重要なのだろうか。日本初の「便秘外来」を設立するなど、腸の重要性について早くから着目してきた小林弘幸医師に、あらためて腸活について訊いた。 ──9年前、GQで「一流になるための“腸の作り方”」という記事を執筆していただきましたが、現在は「腸活」という考え方がすっかり定着しました。当時と変わった点は何かありますでしょうか。 10年くらいでは医学は何も変わりませんが、コロナ禍で「免疫アップ」ということにスポットが当たったことで、また腸活が盛り上がっているということはありますね。コロナで特に重症化するのは、高齢者、糖尿病患者、肥満の人。彼らに共通しているのは、腸内環境が悪いという点です。 ──そもそも、腸活という考え方が盛り上がるきっかけは何だったのでしょうか。 女性誌などの、美容やダイエット特集じゃないでしょうか。「美」と「痩身」ということに腸内環境が重要だということがわかってきて、さまざまな特集が組まれるようになりました。私の便秘外来も、メディアでよく取り上げられるようになり、腸活が盛り上がっていったという印象があります。 ──たしかに、女性誌を中心に「デトックス」というキーワードが盛んに使われていた時代がありました。 そうですね。腸活が広まるにつれてヨーグルトにもスポットが当たるようになり、乳製品会社が一気に盛り上がってきました。腸内環境にビフィズス菌が重要というのはわかっていますが、年齢と共に減ってしまうので、高齢者の場合はビフィズス菌のヨーグルトをとったほうが効率的ということは間違いないですね。あとは、有名なスポーツ選手たちが栄養学に興味を持ち始めたということも大きいと思います。 ──スポーツ選手が自ら腸活や睡眠などの健康情報を発信するようになったことも大きいんですね。 そう思います。10年前は、50歳を超えてようやく腸活に興味を持つという感じだったのが、新型コロナの影響で多くの人が一度は体調不良になり、20~30代も健康に関心を持つようになったということはあると思います。それまでは、若い世代の人たちは風邪もあまりひかないので、健康に関して無頓着な人が多かったと思います。 ──コロナ禍をきっかけに、若い世代まで健康意識が高まったのですね。 それはありますね。先日、300人の起業家の前で講演したんですけど、「コロナ前とコロナ後では、コロナ後の方がメンタル的にダメージを受けやすくなったと思う人は挙手してください」と言ったら、9割が手を挙げました。皆、何かしら体調不良があるんですよ。でも、原因がわからない。もちろんコロナの後遺症もありますし、コロナのワクチンの後遺症もあるといわれている。4年間というコロナ禍の異質な状況で生活していると、皆何かしら体調に変化が起きている。我々が想像している以上に、相当なダメージが起きている可能性があります。 ──腸活は、何歳くらいから始めるといいのでしょうか。 多分、20代くらいから始めないと間に合わないですね。仕事などでストレスがそれなりにかかるということと、腸内環境が乱れる環境にありますから、早いうちから腸内環境を意識してライフスタイルを変えていかないと、メンタル面も肉体的な面でも遅れをとってしまうと思います。 ──胃腸に負担をかける食べ方・飲み方をするのも20代、30代ですよね。 そうですね。若いうちはそれでも持つんです。そのツケが40代以降にきますので、だから20代から腸活をスタートすべきなんです。 ──小林先生はスポーツドクターもされていますが、腸のコンディショニングがいい選手は、具体的にどんな食生活を送っているのでしょうか。 3つあって、1つは朝食をしっかりとっていること。2つ目は、腹7部目くらいで抑えること。3つ目は、寝る3時間前に食事が終わっていること。この3つさえ守っていれば、何を食べてもいいと思います。 ──具体的にどのようなものを食べているのでしょうか。 やはりみなさん、発酵食品と食物繊維を意識してとっていますね。食物繊維の量が減ってくると、生活習慣病や大腸がんにもつながります。食物繊維は1日24~26グラムとるのが理想ですが、たとえばごはんを麦飯にしてみたり、根菜類をとるなどかなり意識しないと足りません。足りていないなと思ったらサプリメントで補うとか。そういったことを日々やらないとダメだなという気がしますね。 ──発酵食品とは、具体的にどのようなものがよいのでしょうか。 納豆や味噌汁、キムチなどはもちろん、ヨーグルトもいいですね。腸に関する意識は相当高く持っていたほうがいいんですけど、特に男性は自分で料理するという人は多くないと思いますので、コンビニをうまく活用するといいと思います。コンビニには、バナナもヨーグルトもあるし、サラダもキムチも納豆もある。お弁当を1個買うのではなく、腸活を意識してお惣菜などをちょこちょこ買うのがおすすめです。食物繊維も発酵食品も意識しないととれないですし、数字で見える体重と違って腸内環境は見えないので、継続することが何よりも大事です。