東京のバンカー報酬は香港やNYに及ばず、市場活況で仕事量増加でも
こうした見方を裏付けるように、日本でのディール数は活発だ。ブルームバーグのデータによると、日本に関連するM&Aは、今年これまでに前年同期比55%増の約230億ドルに達した。昨年10ー12月期から同様のペースで増加している。23年のアジア全体の取引のうち、日本関連は22%を占め、過去4年間で最高となった。
日本と比べて、ウォール街の昨年のボーナスの1人当たり平均額は、取引案件の不振が続く中、わずかに減少した。ニューヨーク州の会計監査官の分析によると、2%減の17万6500ドル(約2655万円)と19年以降で最少となった。
東京のバンカーの報酬が香港やニューヨークなどと比べて低いのは、日本がデフレから脱却し、経済の見通しが楽観的になっているのとは対照的だ。
ある米系投資銀行の幹部は、過去10年間、取引の停滞に伴い、バンカーの報酬は低下していると述べた。こうした傾向は、東京を国際金融都市にするという長年の目標を実現する上で、人材誘致面において不利になるリスクをはらむ。
岸田文雄首相は「資産運用立国」を掲げ、国内外の優れた金融機関や人材が日本に集まることで運用能力を高め、より良い商品やサービスを提供する金融資本市場の実現を目指すとしている。
日経平均株価は今年、過去最高値を更新した。株式市場の活況は、野村ホールディングスなどの国内証券会社や、海外の機関投資家から注文を受ける外資系証券会社にとっては、収益の押し上げ要因となることから、報酬の引き上げにつながるのではとの期待もある。
モーガンマッキンリーの熊沢義喜ディレクターは、大手外資系証券でエクイティ・セールスやトレーダーの人員を増やしているところは見当たらないが、人材へのアプローチは増えており、「潜在的」な需要はあると指摘。「ヘッドカウント拡大に青信号が出た段階で雇えるよう青田買いのような動きが活発化しているのは事実」という。
日本で異例だったのは、国債や金利に連動する証券を扱う金利トレーダーの報酬だ。この問題に詳しい関係者によると、優れたトレーダーの場合、23年の報酬は平均で約2倍の約150万ドル、まれなケースでは300万ドルに達するケースもあるという。