「中国侵攻」ドラマも登場…台湾でお茶の間にまで浸透する戦争恐怖(2)
◇「戦争対備討論必要」vs「反中宣伝にすぎない」 反中志向の政府与党「民主進歩党(民進党)」は作品製作を全面的に支援している。『ZERO DAY』予告編には実際の台北総統室や台湾軍艦などが登場する。また、台湾文化部が『ZERO DAY』の製作費2億5921万台湾ドル(約12億3100円)のうち半分近い1億1301万台湾ドルを支援した。李遠文化部長(長官)は「われわれは中国が実際にこちらに侵略してくるかもしれないという隠れた恐怖に直面している」と話した。 ドラマの主題意識も現政権の見解とも似ている。5月に当選した頼清徳総統は前任者の蔡英文氏よりも強硬な反中・独立の立場を示しているという評価だ。就任式から両国論を主張した頼総統は最近「中国は台湾を代表する権利がない」「『一つの中国』原則を受け入れれば台湾は消滅する」などの発言で水位を高めている。 台湾2位の半導体企業ユナイテッド・マイクロエレクトロニックス(UMC)の曹興誠・元会長も『ZERO DAY』の製作費を支出した。曹氏は台湾の防衛力強化を主張してきた人物だ。曹氏は2022年、台湾の防衛力を強化しなければならないとし30億台湾ドルの寄付を約束した。 ブルームバーグは「『ZERO DAY』の予告編は全国的な反応と討論を呼び起こした」とし「台湾軍の兵力募集への助けになるだろう」とした。最近台湾は少子化で軍隊に志願する人員が減っている状況だ。 ◇「中国、強硬態度が変わらなければ継続するだろう」 反面、親中志向の野党「国民党」は政府支援を受けたコンテンツが執権勢力のための宣伝物だと批判している。前回の総選挙で国民党副総統候補として出馬した趙少康氏は「実に低級だ。彼らがまたどれくらい多くの人々を虚偽で告発して第5縦隊の烙印を押すとは誰が知るだろうか」と話した。 中国内ソーシャルメディアでは『ZERO DAY』関連の言及が検閲対象となっている。中国政府は声明を通じて「台湾が恐怖をまき散らしている」と批判した。上海交通大学台湾研究センターの盛九元・所長は中国官営メディアである「グローバルタイムズ(Global Times)に「この宣伝で最も鳥肌が立つ側面は『内部の敵づくり』」としながら「民進党に同意しない人は誰でも反逆者の烙印を押される場合があるということを暗示する」と非難した。 だが、中国の強硬な態度に両岸間の緊張はさらに高まっている。中国の習近平国家主席は公開席上で数回にわたり台湾統一に対する意志を表明した。米国も習主席が第3期執権最後の年である2027年に台湾を侵攻する可能性があるとみている。米海軍は先月2027年中国の台湾侵攻の可能性に備えて新たな作戦指針を出したが、これについて専門家は米国が中国との戦争の可能性をより一層印象づけたと評価した。 これに関連し、国策研究機関である台湾中央研究院の劉文研究員は習主席が台湾に対していつ、どのような措置を取るのかについての不確実性によって、このような傾向は続く可能性があるとWSJに語った。