シンボルツリーにもおすすめの常緑ヤマボウシ
冬に葉を落とす落葉樹。1年を通して葉をつけている常緑樹。その違いは、過酷な季節をどう乗り切るかという戦略の相違です。 落葉樹は冬に休眠し、寒さを避けて過ごします。常緑樹は、丈夫な葉をつけて光合成を続けながら、寒さに耐えて春を待ちます。困難を前に避けるのか、耐えるのか。なんだかハムレットのようですが、今回は「一般的には落葉種が知られているけれど、その仲間で常緑のタイプ」という、耐える性質の木を紹介します。 みんなのヤマボウシの写真 ■『趣味の園芸』2月号 連載より(一部抜粋)
常緑ヤマボウシ 光沢のある葉は紅葉もする
常緑ヤマボウシは、その名のとおり、一年中葉が茂っており、美しい花と果実が楽しめるので、人気が上昇している庭木です。 一般的なヤマボウシは、日本原産の落葉樹。関東地方南部から九州まで広く分布しており、公園樹や街路樹としても親しまれてきました。 ハナミズキの近縁で、十文字形の愛らしい花が咲きますが、じつは花のように見える白い部分は、正確には「総苞片(そうほうへん)」という器官。本当の花は、中央の球形部分です。これが僧侶の頭で、白い総苞片が頭巾に見えることから、比叡山延暦寺の山法師になぞらえて、その名がついたという説もあります。 一方、常緑ヤマボウシは中国原産。トキワヤマボウシという名でも呼ばれます。濃い緑色の光沢のある葉が特徴です。 人気の上昇とともに、園芸品種もふえていますが、おすすめは′月光′。花つきが非常によく、木全体を覆うように咲きます。また近年は、赤花の品種も登場し、流通し始めています。 常緑性とはいえ、寒さに当たると紅葉して葉は減り、春先には落葉して、新しい葉が芽吹きます。幼木のうちは落葉も多いですが、次第に環境に順応して、葉が茂ったまま冬越しできるようになるでしょう。育てやすく、シンボルツリーとしておすすめです。 (解説・古賀尚樹) ●『趣味の園芸』2024年2月号 連載「木と暮らす12か月」より