【10年ひと昔の新車】マクラーレン MP4-12Cは、F1テクノロジーをフィードバックした「毎日乗りたいスーパーカー」だった
マクラーレン MP4-12C(2012年:ニューモデル)
「10年ひと昔」とはよく言うが、およそ10年前のクルマは環境や安全を重視する傾向が強まっていた。そんな時代のニューモデル試乗記を当時の記事と写真で紹介していこう。今回は、マクラーレン MP4-12Cだ。 【写真はこちら】試乗コースはあいにくのウエット。エアブレーキを作動させ、水煙を上げながら減速する。(全9枚)
クルマ好きの中ではメジャーなブランドのマクラーレン。ホンダ製エンジンで戦ったF1マシンや、3人乗りのスーパーカー「マクラーレン F1」といったロードゴーイングスポーツも思い出させる。レーシングカー業界においては〝良家の出〞のような存在だ。 だが、彼らに課せられた重要な課題は、ここで紹介するMP4‐12Cをどうマーケットに訴求していくかだ。ライバルはフェラーリ 458イタリアと考えるのは容易だが、フェラーリは知っててもマクラーレンを知らないスーパーカー フリークは多い(編集部註:2012年当時)。そのため、どうアプローチしていくかの興味は募る。 さて、そんなMP4‐12Cに試乗する機会を得た。場所は英国のTV番組「トップギア」で知られるダンスフォールドのサーキット、いや正しくは飛行場の一角。それに若干の一般道だ。今回の試乗車は、既に日本に上陸しているものと同じスペック。もちろん細かい仕様は異なるが、このクラスになればすべてがビスポーク(オーダーメイド)と考えるのが正しい。スタンダードの状態で買う人はいないし、また用意されたオプションで満足する人もいない。 パワートレーンは3.8LのV8+ツインターボで最高出力は600psを発生する。それもけっこうな高回転型で、7000rpmでピークパワーを出す。ただしトルクは3000rpmから600Nmという最大値を発生させるから、扱いにくさはない。7速DCTをATモードにしていれば、街乗りに支障は感じなかった。試乗後のプレゼンテーションでは「毎日乗れるスーパーカー」と言っていたが、なるほど確かにそう仕上がっている。
一般道からサーキットまでフレキシブルに対応
乗り心地に関しては、サスペンションのセッティングを“ノーマル”にしておけばいい。一般道のボコボコした路面で突き上げやシェイクもなくフラットに走る。だが、これを“スポーツ”、さらに“トラック”にしていくと、その性格がガラリ変わる。 コーナーでの粘り腰がどんどん強まってきて、かなりの速度域でもピタッと張りついた走りを見せる。しかも、パワートレーンと書かれたダイヤルも“トラック”にすれば、本領発揮とばかりにレーシーな世界へ誘う。フラップの開いた排気管は爆音を奏で、アクセルに対するピックアップもクイックになる。この感覚は、レーシングカーそのものだ。 したがって、挙動はミッドシップらしく自分を中心に弧を描くようにコーナーへ進入する。スッとステアリングを切ったときの一体感は、カーボンとアルミフレームの賜物だろう。かなりクイックだ。マクラーレン社は、カーボンファイバーを扱ってきた歴史があることを強くアピールしていたが、このあたりは明らかにF1マシンを作ってきた強みといえる。 また、明らかにレーシングマシンからのフィードバックとして、エアブレーキを採用していることも挙げられる。リアスポイラーが90度近くまで立ち上がり空気抵抗を強めてくれる。こんな市販車は、ブガッティ ヴェイロン以外に見たことがない。 そんなMP4‐12Cに、この夏(編集部註:2012年)スパイダーが追加されるのもニュースだ。今回、生産ラインの見学中に偶然チラ見したが、かなりいい仕上がりだった。オープンモデルだから、リアエンジンがガラス越しに拝める。これはアウディ R8ではできなかった手法だ。このように話題が尽きないマクラーレン。今後しばらくは、このブランドから目が離せそうになさそうだ。
マクラーレン MP4-12C 主要諸元
●全長×全幅×全高:4507×1909×1199mm ●ホイールベース:2670mm ●車両重量:1336kg ●エンジン:V8 DOHC+ターボ×2 ●総排気量:3799cc ●最高出力:441kW(600ps)/7000rpm ●最大トルク:600Nm(61.2㎏m)/3000-7000rpm ●トランスミッション:7速DCT ●駆動方式:縦置きミッドシップRWD ●燃料・タンク容量:プレミアム・72L ●EU総合燃費:8.5km/L ●タイヤサイズ:前235/35R19、後305/30R20 ●当時の車両価格(税込):2790万円
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