エヌビディア揺るがず、貿易戦争再燃でも-生成AI支出2000億ドルに
(ブルームバーグ): 人工知能(AI)向け半導体で圧倒的シェアを占め、世界最大の時価総額を誇る米エヌビディアが20日、今年8-10月(第3四半期)決算と11月-来年1月(第4四半期)の業績見通しを発表する。2024年のS&P500種株価指数のリターンへの貢献度は同社が最も高く、全てのマクロ投資家が注目する。
今年に入り時価総額がほぼ3倍になったエヌビディア決算への期待は当然高い。同社から半導体生産を受託する主要サプライヤー、台湾積体電路製造(TSMC)の業績を手掛かりとすれば、AI需要は引き続き好調だ。しかしトランプ次期米大統領の下で貿易戦争が再燃する場合、エヌビディアの勢いがそがれるかがより興味深い問題だ。手短に答えれば、その可能性は低い。
第一にエヌビディアの中国事業が、従来からの貿易制裁により著しく縮小する現状に留意すべきだ。21年時点で中国は売上高の25%近くを占めたが、直近の四半期は12%にとどまった。それでも過去1年の利益急拡大が妨げられることはなく、業績をけん引するS&P500種指数構成銘柄の一つとなった。
第二にエヌビディアには米国内で多くの需要があり、マイクロソフトやアルファベット、アマゾン・ドット・コム、メタ・プラットフォームズを含む最大顧客は、第3四半期を通じてデータセンター設備や他の固定資産に合計590億ドル(約9兆1200億円)を投じ、今後1年でさらに多くの支出を行う方針だ。
だが、トランプ氏が掲げる全ての国・地域を対象とするユニバーサル関税は、より多くの未知数をもたらす。エヌビディアは5-7月(第2四半期)の売り上げの57%を海外から得ており、どちらかといえば、こちらのシナリオの方が同社と株式市場全体にとって逆風になりかねない。
トランプ大統領(当時)が18年に関税第1弾を公表した際、エヌビディアの株価は31%急落したが、AIブームはまだ本格化していなかった。ブルームバーグ・インテリジェンス(BI)の予測によると、生成AIへの支出は25年に2000億ドルに達する可能性があり、エヌビディアがその多くの恩恵を受けると予想される。