日本人が知らない「欧州イノベーション」の最前線。TOA報告会で語られたテックの未来
現代イノベーションは、領域を横断して生まれる
あらゆるイノベーションの裏にテクノロジーの存在があるといっても過言ではない現代。 TOAが取り上げる分野はAIに限らず、宇宙開発、医療、バイオ、気候、モビリティなど幅広い。それぞれの分野で頭角を現すスタートアップを知る機会としても機能している。 2024年のTOAでは、宇宙における物流を支えることを目指す欧州版SpaceXとも言える民間の宇宙開発会社であるThe Exploration Companyが登場。宇宙開発が近い将来「ビジネス」として成り立つことを感じさせた。 同じ航空宇宙の分野でも、複数の人工衛星を連携させて運用する「衛星コンステレーション」の技術を用いて温室効果ガスを測定するAIRMOや、衛星を土壌の「質」の測定に活用しているConstellerなど、分野をまたいだ領域でのスタートアップが目立った。 Business Insider Japan副編集長の三ツ村崇志は、 「日本にも同じような取り組みをできる企業はあるはずですが、それをビジネスとして形にする点において欧州は一歩先を行っている」 と指摘した。 TOAでは例年、スタートアップ創出とは少し異なる視点から未来を見据える動きもある。 今回のTOAでは、「地球外知的生命体」の痕跡を探す、ハーバード大学のプロジェクト「ガリレオ・プロジェクト」の紹介があった。ハーバード大学の天文物理学者でブラックホールの研究で知られるアヴィ・ローブ氏が推進するプロジェクトだ。 「地球外知的生命体」と聞くと、SF的妄想だと思う人が多いかもしれないが、「並外れた仮説を証明するには、並外れた証拠(データ)が必要だ」と語るローブ氏の信念は、あくまで科学的根拠を優先している。先入観を捨て、新たな発見に臨もうとする同氏の情熱的な研究姿勢は、多くのオーディエンスの胸を打った。
欧州のカンファレンスに参加する意義とは?
報告会では視察ツアーへの参加者からもTOAのボーダレスな魅力について言及があった。 例えば「アート」の視点。昨今、ビジネス領域でもアート的な発想や感性が注目されているが、TOAもそこは強く意識している。 「The Art of Human Connection(人間関係の芸術)」と題されたプログラムでは、参加者同士がハグをするプログラムが実施された。通常なら交わることのない、知らない者同士がつながるきっかけを生む。 「イノベーションを起こすためには、やはり新たな感情や視点が生まれることも大切ですよね。最先端のテックの話だけでなく、こうした対話を生むプログラムが用意されているところもユニークでした」 と参加者からは賞賛の声が上がっていた。 また、「欧州企業が持つ社会課題(ソーシャル・イシュー)解決への高い意欲にも刺激を受けました」という声もあった。 一例として、「Forging Europe's Green and Prosperous Talent Engine(欧州の環境と繁栄のための人材育成エンジン)」というセッションでは、移民問題、環境問題を解消する手段として、「グリーンカラー」と称する新たな人材育成に向けた取り組みが紹介されたという。 インフォバーンが企画する視察プログラムでは、TOAへの参加以外に、注目すべき拠点への訪問や現地起業家とのネットワーキングも提供している。今年は、欧州最大規模のモビリティ開発コミュニティ‟The Drivery”、欧州最大規模の医科大学‟Charité”と連携して革新的な研究を行う‟Berlin Institute of Health”など、7つの施設を巡り、それぞれのキーパーソンから直接に話を聞いている。TOAも含め、参加者にとってまさに「欧州イノベーションの最前線」を体験する機会となったという。 かつて、ヨーゼフ・シュンペーターは「新結合」の必要性を唱えた。イノベーションを起こすためには、これまでとは異なる視点、新しい価値観を取り入れ、発想することが求められる。テクノロジーの未来像を知るだけでなく、未知の刺激を肌で感じる契機として、来年(2025年)のTOAに注目してはいかがだろう。 ※インフォバーンはBusiness Insider Japanを運営するメディアジーンのグループ会社です
TOA事務局