リーディング音楽劇として蘇る手塚治虫の『ジャングル大帝』ルネ&ルッキオ編が開幕 公演レポート到着
2025年1月10日(金) に大阪・梅田芸術劇場シアター・ドラマシティで開幕した、リーディング音楽劇『ジャングル大帝』ルネ&ルッキオ編の公演レポートが到着した。 【全ての写真】リーディング音楽劇『ジャングル大帝』ルネ&ルッキオ編より 円形ステージをぐるりと囲むように配置されたオーケストラ。順番にステージに現れたキャストたちはストレッチしたり、笑顔で挨拶を交わしたり。和やかなムードのなか、気づけばオウムのココを演じる西川大貴が、ステージ中央で「レオ編」で起こった物語を歌と語りで伝え始め、舞台の幕が上がった。 白い百獣の王・レオと妃のライヤに生まれた双子の子ども、男の子のルネを演じる深田竜生、女の子のルッキオを演じる黒田光輝の最初の一声が、赤ちゃんライオンの鳴き声だったのが可愛らしい。無垢で好奇心旺盛なルネを演じる深田に対して、肩を小さくすぼめて話しかける黒田のルッキオが、小さな女の子に思えるから不思議だ。 ひとりで2役以上演じるのが朗読劇。この舞台も例外ではなく、人間の世界へ飛び出したルネがサーカス団で出会う男の子・ピートを黒田が演じている。レオがケン一と友情を育んだように、ルネとピートもお互い励まし合い、友情が芽生えてくる様子も見るほどに気になってくる。一方の深田は、ケン一の幼なじみで地質学者のピエール役も。ここでは声色を変え、ムダにカッコいい(!?)ポーズで決めるキャラクターで笑いを誘った。 他にも2組の友情が描かれている。月光石を巡って険悪な仲になっていたプラス教授(宮原浩暢)とマイナス博士(工藤広夢)、お互いに子を持つ父となって再会したレオ(上口耕平)とケン一(永田崇人)。月光石を求めてムーン山への探検をする道中に描かれるどちらの友情も「美しい」という言葉だけでは収まらない、本当の意味での命懸けの友情をリーディングすることで、観る者の涙を誘った。友情だけでなく、水嶋凜演じるメリーの女性の強さ、ダンドイ舞莉花が演じるライヤの母性にも胸を打たれる。 劇中で表現された弾むようにうれしい気持ち、猛吹雪の脅威、生きていく勇気……など、さまざまな感情がオーケストラの生演奏と浦嶋りんこ、吉田純也のコーラスでさらに深みを増していたのも本作の素晴らしいところ。さらにふたりのダンサー(ホナガヨウコ、池田遼)による見事な動きも相まって、まるで本を読んだときに誰もが感じる自分の頭の中だけに広がる絵を目の前で見ているよう。物語の世界が立体的に広がっていき、どんどん引き込まれた。 手塚治虫が伝えたかった命の尊さが存分に描かれたこの作品。ボロ泣き必至だが、最後は清々しい気持ちで劇場を後にすることも間違いない。 <公演情報> リーディング音楽劇『ジャングル大帝』ルネ&ルッキオ編 原作:手塚治虫 脚本・作詞:福田響志 演出:ウォーリー木下 音楽:岩崎廉 【出演】 深田竜生 黒田光輝 永田崇人 西川大貴 工藤広夢 水嶋凜 ダンドイ舞莉花 上口耕平 宮原浩暢(LE VELVETS) スペシャルコーラス:浦嶋りんこ コーラス:吉田純也 ダンサー:ホナガヨウコ 池田遼 【大阪公演】 2025年1月10日(金)~13日(月・祝) 会場:梅田芸術劇場シアター・ドラマシティ 【東京公演】 2025年1月18日(土)~31日(金) 会場:有楽町よみうりホール