郊外にあったホームセンターが、なぜ「大都市の駅前」に出店しているのか
人口減の日本でホームセンターが生き残る道は
つまり、人口が急速に減っているのだから本来は売り上げが落ちるはず。が、そうなっていないのは店舗を増やすことで、どうにか持ちこたえさせているという見方もできるのだ。ただ、人口減少が著しい地方ではこのスキームももはや限界なので「新客」を獲得せざるを得なくなった。人口減少のこの国で唯一、新客が取れそうな場所といえば東京や大阪という「大都市」しかないではないか。 しかし、都会のド真ん中でガチの農業や工事に使うツールが売れるわけがないので、新たなコンセプトをひねり出さなくてはいけない。そこで狙いを定めたのが「ガーデニング」「ライフスタイル」「DIY体験」だったというワケだ。 ただ、実はこの分野はかなり過酷なレッドオーシャンである。既に都市部には、ホームセンター業界よりひと足先に郊外から都市部に進出を果たした「強敵」が待ち構えているからだ。 ニトリやイケアだ。 ご存じのように、以前のニトリやイケアは郊外のロードサイドで大型店舗が主流だった。しかし、人口減少を見据えて2016年にニトリが都市型店舗を出店。2020年にはイケアも東京で都市型店舗をスタートした。これで普段、電車移動をしている都市部の人々、特に若年層を取り込んだのである。 つまり、大都市に次々と進出するホームセンターの狙いは、都市型のニトリやイケアの顧客を奪還することにある。それらの店舗をハシゴすればよく分かるが、キッチン用品、掃除洗濯用品、インテリア雑貨など、ほとんど同じ品ぞろえなのだ。
ホームセンターがニトリになれる理由
では、ホームセンターはニトリの牙城を崩せるのか。そのポテンシャルがあることは、既にあるホームセンターのプレーヤーが証明している。 九州を中心に363店舖を展開しているナフコだ。 同社は1947年、北九州の家具店が発祥ということもあり、2010年に家具とホームファッションアイテムを中心に取り扱う新業態「TWO-ONE STYLE」をスタート。家具からインテリアまで幅広く取り扱っておりニトリと遜色がない。公式Webサイトで紹介している店舗をカウントしたら100を超えていた。 さらに、ニトリのように都市型店舗にも進出している。2022年4月、松坂屋静岡店を出店。これまでの郊外店舗とは異なり、より都市部の客を意識して、さまざまなインテリアを五感で体験できるようにしているほか、ガーデンニングなどの品ぞろえも充実させているのだ。 さて、このような話を聞くと、ホームセンターが生き残っていくにはニトリやイケアなどの分野に積極的に進出して、客を奪っていくしか道がないと思うかもしれない。しかし、実はそこも微妙だ。