小児科医が伝える「学校健診」の現状 小学校との打ち合わせの機会「ないことが多い」【学校健診問題を考える(下)医師の見方】
学校側には児童や保護者への説明が求められる
森戸さんは、学校側には打ち合わせの機会を設けてほしいと話す。 森戸さんによると、学校健診の際、「プライバシーを守るための衝立はこんな感じでいいですかとか、同性の先生が立ち会いますとか、そういうことを打ち合わせする機会がないことが多い」という。 健診の際以外にも、健診を受けられなかった児童や不登校児への対応に関する打ち合わせは事前にない、と話す。 健診は学校側に定められた義務。そのため、保護者や児童に対する「(学校健診を)どのように行うか、いつやるか、その目的は何か、配慮の方法といった説明は、学校側が主体となってしてほしいなと思います」(森戸さん)。 また、学校側が健診の目的や主体、文科省のマニュアルについて重視していない場合もある。それだけに、個々の学校ではなく文科省や自治体による保護者への説明や周知があってもよいのではないか、と提案する。
脱衣自体が問題になることは「正しい診断に結びつかない」
児童生徒への心情やプライバシーの配慮は当然必要だが、脱衣自体が問題になることは、正しい診察につながらないのではないか。森戸さんは、次のように見解を述べた。 「学校健診では、何百人、少なくとも何十人を一度に短時間で見なければいけません。その時に情報量が多くないと、正しい診断に結びつかないことがあります。たとえば背骨に側弯がないかどうかということは、着衣のままでは見落としがありえます」 また、アトピー性皮膚炎の悪化や傷、皮下出血から医療の忌避や虐待の発見につながることも少なくない。森戸さん自身も、子どもの身体に不自然なあざを発見し、虐待の発見につながった経験があると話した。 「なるべく脱衣でいることが望ましいですが、当然、脱衣のまま待っている必要はありません。すぐ脱げるような状態で、診察自体はプライバシーが保たれる状況で、同性の第三者の同席のもと行われるのがよいと思います」
学校健診をなくすことは「子どもにとってデメリットの方が大きい」
SNSで一部上がっている学校健診は不要との意見に対して、森戸さんは「(学校健診に)代わるいい方法があるならやめてもいいと思うんですけど」としつつ、次のように話す。 「同じ年齢の子が大勢集まっているところで、一度にスクリーニングとして診察をするというのは大変効率がよく、保護者は医療機関に連れて行かずにすみ、子どもにとっても健康の問題が早期発見できてとてもいい制度だと思います。だからこそ、明治時代からずっと続いてきているので」 さらに、こう続ける。 「以前には医師による盗撮被害もあり、そういった問題のある医師がいるから、配慮のない学校があるから感情的にやめてしまおうというのでは、子どもにとってデメリットの方が大きいです。うまく運用する方法見つけるのが大人の役目ではないかなと思います」 今まで大きな問題として扱われてこなかった学校健診での配慮の問題。なぜ今、表面化してきているのか。森戸さんはそれはいい傾向だと見ている。 「子ども自身も、プライベートゾーンというのはむやみに見せてはいけないんだ、それは嫌だって言っていいんだ、疑問を呈していいんだっていうことが浸透してきたからではないかと思います」