環境省は6日、輪島市沖に洋上風力発電を建設した場合の生態系や漁業への影響を調査・分析する実証実験を年度内に行うと発表した。発電設備が設置される可能性がある海域に観測ブイを浮かべ、魚群の動きなどを把握し、漁業への影響を調べる。洋上風力の実現に向けては周辺海域で操業する漁業者らの理解を得られるかが最大の課題とされ、科学的データを基に地元の不安払しょくにつなげる狙いがある。 　実証実験は環境省として初めての試みで、国が費用を負担し、輪島建設協同組合に事業を委託する。同組合は、輪島市が洋上風力誘致の可能性を探るために設けた検討協議会の構成団体の一つとなっている。 　実証実験は、深い海域にも建設しやすく、国内での普及が期待されている「浮体式洋上風力発電」を想定して行う。海中にある生物のDNA（環境DNA）を分析し、生物の種類や個体数などを推定。風や波、潮位といった海象条件による違いなども把握し、漁業者の持つ魚探データと照合して漁業への影響を測る。 　　●市長「復興の一助に」 　輪島市の検討協議会長を務める坂口茂市長は「洋上風力は能登半島地震で被災した輪島が復旧から復興へ進む大きな一助になる。誘致へ一歩前進した」と歓迎。副会長の笹原丈光県漁協輪島支所運営委員長（県漁協組合長）は「調査で得られたデータは速やかに漁業者に説明してほしい」と求めた。 　環境省自然環境計画課の担当者は「全国では導入に適した環境なのに、地元の理解が得られずに誘致に踏み出せない地域も多い」と指摘し、事前調査を基に地元の理解醸成を図るモデルケースとしたい考えを示した。 　同省はこれとは別に、浮体式洋上風力導入促進事業として、輪島建設協同組合が設置を検討するために行う海域調査などの取り組みを採択し、支援することも決めた。   　★浮体式洋上風力発電　沖合に係留した浮体に風車を設置する発電設備。陸上の風力発電より強い風を安定的に得られ、景観や騒音の問題も少ない。海底に土台を据え付ける「着床式」と異なり、日本周辺に多い深い海域にも建設しやすい。