すなやますなこ「パンダ、ラッコ、ビーバー…」動物の生態に寄り添ってイラストを描く
動物本来の生態や特徴を捉えながらも可愛らしいパンダをはじめとした動物のイラストが人気を集める、イラストレーターのすなやますなこさん。最近はXにアップしている漫画『悪を許せないラッコ』も話題となっている。 【イラストギャラリー】すなやますなこ、こだわりのイラスト こだわりを英語にするとSticking(スティッキング)。創作におけるスティッキングな部分を、新進気鋭のイラストレーターに聞いていく「イラストレーターのMy Sticking」。今回は、すなやますなこさんに動物を描くようになったきっかけや、動物を描くうえでのこだわりを聞きました。 ◇特殊造形に大ハマりだった大学時代 雑誌『子供の科学』(誠文堂新光社)での連載や、スマホゲーム『けものフレンズ3』(アピリッツ)のカードイラストなどをこなしながら、SNS上にパンダをはじめ動物のイラストや、漫画『悪を許さないラッコ』をアップしているすなやまさん。幼少期はどんな子どもだったのだろうか。 「覚えていないくらい小さな頃から絵は描いていました。でも、絵を描くよりも、ぬいぐるみとかでお人形遊びをしていました。お人形遊びをやっていると、“こういうものが欲しいな”と思う人形とかが出てくるんですよ。 でも、すぐに買ってもらえるわけではないので、粘土で作ってみたりとか、紙にイラストを描いて、それを立たせて人形みたいにしたりして遊んでました。そんな遊びを中学生くらいまで(笑)。 粘土で実際に存在しない動物とかも作ってました。ウサギとキツネとイヌを足した動物とか。でも、そういう人形が無かったので、自分で作るしかなくて。遊んでいると、どれだけ出来が悪くても、自分の理想の子に見えて愛着も湧いてくるんですよ」 すなやまさんは幼い頃からイラストと動物への関心は高かった。時は過ぎ、芸術系の大学に入学。WEBデザインを専攻していたが、主に取り組んでいたのは、WEBデザインとは別のことだった。 「特殊造形部という部活で、仮面ライダーとか戦隊モノに出てくるようなマスクやスーツを作ってました。特撮作品のファンというよりは、“やったことのないことをやってみたい”という気持ちが強かったんです。今までずっとイラストを描いてきたけど、それ以外の自分が全く知らない世界でアウトプットをしてみたい! と思っていたところ、出会ったのが特殊造形でした。 オープンキャンパスに行ったときに、すごくクオリティの高い怪獣の頭を展示してるブースがあったんです。 “怪獣を自分で作ってみよう”と思ったことが人生で一度もなかったから、そういうのを作ってる人が同年代にいるんだ、ということに衝撃を受けて。 そこで、オリジナルでヒーローや怪人のマスクとスーツを作って、ショーをするっていうことをやってました。卒業制作もヒーロースーツの展示というか、着用してグリーティングみたいなことをしました。その頃のスーツも、動物的なデザインが強めに出ているものなので、根本的には今、描いてるものとあまり変わってないのかなと思います」 そこまで特殊造形にハマったのに、仕事にしようとは思わなかったのだろうか。 「就活のときに、戦隊モノのおもちゃを作っている会社にどうしても行きかったんですが、最終選考で落ちてしまったんです。その道が断たれてしまったので、悩んでいたときに、動物園・水族館を中心にデザイン業務をしているデザイン会社に拾っていただきました。それから、いろんな動物を描くイラストレーターとして働くことになりました」 ◇可愛さとリアリティを両立させたい 紆余曲折あって、動物のイラストを描く現在のすなやまさんの原型にたどり着いた。その会社に入った頃から、パンダに興味を持つようになったそうだ。 「アドベンチャーワールド〔和歌山県白浜町にある動物園・水族館・遊園地が一体になったテーマパーク〕のお土産商品とか買い物袋のイラストを描いたり、フードのデザインとかをやっていました。パンダを描く機会が多かったので、そのときから興味を持ち始めたんです。アドベンチャーワールドには、いろんな動物がいるので、パンダ以外にもたくさんの動物を描きました。 例えば、キングペンギンとコウテイペンギンの違いをしっかり描き分ける必要があったり、イルカを可愛く描きたくて太めに描いたら、イルカをそう描くと妊娠してるように見えてしまうから、修正してほしいと言われたりしました。修正指示も動物園ならではでしたね。 その頃から、動物たちの姿だけを抜き取って可愛く描くというよりは、その子たちがどう生きているかがわかるようなイラストを描けたらいいなと努めています。可愛さとリアリティ、その両方を描いていけたらと思います」 動物の生態に寄り添ってイラストを描くすなやまさん。当然のように動物園に行く機会も多い。 「神戸在住なので、王子動物園は馴染み深いです、フリーランスのイラストレーターとして独立した際はタンタンさんへご挨拶に伺ったこともありました。私も頭だけですけど、パンダなので(笑)。 自分で撮った写真を基にイラストを描いたりもします。やっぱり生で見ると、動画や写真で見るのとでは全然違うんですよ。だから、なるべく定期的に観察しに行くようにはしています。 イラストを描くときは、その動物の生態をよく調べるということはこだわってやっています。ものすごくリアルに描かれているイラストと、ものすごくデフォルメされているイラスト、その中間を狙っていくことを意識しています。 パンダが好きだけど、このイラストのパンダはちょっと違うな……みたいに感じる人もいると思うんです。私もそのうちの一人なんですけど。だからこそ、パンダ好きに刺さるパンダを描きたいっていう気持ちが強くあります。パンダは本当に魅力的な動物で、生で見るとグッと惹かれるものがあるんですよ。 とくにパンダのでんぐり返しが大好きで、めちゃくちゃ見てしまいます。パンダが怒って転がってるところが大好きなんです。笹がおいしくないから“新しい笹を出せ!”ってゴロゴロしてるのとかが可愛くて。私はそんな感情の表し方したことないし、でんぐり返しで怒りを表現ってよくわからないけど(笑)」